第19話

入江先生と夕日に向かって移動するなんて

体育祭前日の校庭のライン引きの時ぐらいかもしれない



“数学教師の意地を見せて、きっちり200mのトラックラインをひけ!”と同じく数学教師である教務主任の田口先生の指示で毎年、入江先生とあたしがそれをやってる。



そんな業務ではないのに一緒に夕日に向かって移動しているあたしたち。



こんなことしていると

あたしはまた勘違いしそうだ


これはデートなんじゃないかって




「先に着いてたみたいだな。」

『えっ?』



入江先生が運転する車が辿りついたのは浜名湖に浮かぶ弁天島海浜公園の駐車場。


そこから湖の中に建てられている赤い鳥居がよく見えて。


その向こう側には国道バイパスの大きな橋脚が湖を跨ぐようにかけられている。



天気がいい時は

橋脚の向こう側は青一色に染まり

映画の一部分でも観ているような気分にさせられるぐらい絶景。



その絶景の中で

衣服を着たまま波打ち際から鳥居のほうに向かって歩き始めた男性とその彼を追いかけて行った女性の姿が目に飛び込んできた。



『入江先生!!!!あそこ!!!!!あの人達、ヤバイんじゃ!!無理心中とか?!』



これはデートかもなんてドキドキしていたのに、そんな空気はどこへやらになってしまった私はシートベルトを外そうとしている彼の腕を勢い良く引っ張った。




「は?」



目を凝らして私が指差す方向をじっと見た入江先生。




「あ~。心中ね。」


『早く止めないと!!!!』


「ほっておいてもいいんじゃない?」


『なんで?!』


「幸せなハズだから・・・彼らは。」




彼らのあんな姿を見ても

決して慌てる様子が見られない彼。




『へっ?知り合い・・・ですか?』


「職場放棄してここまで逃亡してきた男とその奥さんになる人。」


『え~?!!!!!!』



まさか駆け落ちってやつ~?



それじゃ、尚更、放っておくのは

マズイんじゃ・・・・

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