第二章
(一)
どうしてだろう。
どうして、頭の片隅に追いやってしまっていたのか。
「……どうしよう、どうしたらいい? なんで、今頃なんだ?」
わからなかった。
そして今は、その問いに誰も答えてくれる者はいない。
宮田は自室のベッドでお布団をかぶり「なんでなんで」と再び呟いて、ぎゅっと目をつぶる。
どうしたって、答えが出ない。
室内の電気も付けず、夕飯の呼びかけにも答えることなく篭った。
あれは夢だったのかななんて、どうして思ったのか。
だって、あれは、確実に近づいてきていたのだ。
でも。
なぜだろうか。
その時、ぽっと一人の友人の顔がいづるの顔が頭の中に浮かんだのだ。
自分でも、どうしてかはわからない。
けれど彼ならなんとかしてくれそうな気がした。
一番近くにいた、長い付き合いのある友人で親友だから。
というのもある。
けどたまに、いづるが不思議な雰囲気を持っている気がしていた。
だからというのもあった。
「いづる、出るかな? 電話……」
ぷるるる、ぷるるるr。
コールが二回。かかった。安堵する。
「……も、もしもし、いづる? あの「ねえ、おぼえてるう?」ひっ!」
どうして、どうして――
かけた先は友人の電話番号で、なのに聞こえてきたのは。
あの時に聞いた声だ。
忘れもしない、少し、篭ったくらい女性の声。
「わすれてないわよお、わたしわねぇえ。だから、もらうわあ」
「やめ、やめて! おねがいだから!」
「ひひひいh、やだあ、やくそくだものおお」
まるで狂ったような笑い声が耳に聞こえ、雑音と何か叫び声が聞こえた。
その声にはっとなる。
「……? だれの、織田?! 織田なのか?!」
「たすけ、ね! おいかけ……!」
ぷつり。
つー、つー。
切れた電話に、愕然としてスマートフォンを落とす。
つかまってしまった。
つれていかれてしまった。
「つっ!」
ばっと布団から抜け出して、外へ出る。
(あそこへ行かなくちゃ、早く!)
「ひろー、電話よ。織田君のお母さんから。なんか帰ってこないって、ひろ?」
「ちょっとでかけてくる!」
「ひろってば!」
慌てて、サンダルを引っかけて庭を出る。玄関よりそちらが早い。
庭の入口から出るとあの家の跡地、空地へと走り出す。
でも、そこには。
「なんで?……空き地、ない?」
まるで空間が切り取られたように、空地の場所が消えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます