ブディズムなのか……? 前編
今日は通院日である。大体二週間ごとで、前回からカウンセリングが追加されている。主治医のT先生とカウンセラーのOさんのあれそれを勝手に妄想し興奮したのは、倫理的にはカスだしダメなのだが、体調への影響としてはかなり良かったんじゃないかと思う。
なぜなら我々のような人種は男性同士の某で興奮して喜び、元気になっていくからだ。
さて通院しましょう。クソクソ暑いが外に出て、せっせと通い慣れつつある道をゆく。
クリニックはいつも通り鎮座している。時刻は予約よりも三十分ほど早いけれど、まあ暑いし中で待たせてもらおうと扉を開く。
待合室のソファに座って二分もせずに名前を呼ばれた。
診察室にいたT先生は今日も絶妙に気だるそうで絶妙にニヒルスマイルだった。
「調子はどうですか」
「あ、はい、ここ一ヶ月くらいは落ち着いてまして」
「んー、いいですね。睡眠は?」
「変わらずですが不調でもなく……暑いのにクーラーをつけず起きたりはしましたが、クーラー入れればすぐ寝付きました」
「はい、はい、暑さは気を付けなきゃね……食欲はどうですか」
「ありすぎるくらいですかね……」
「んん、わかりました。ではカウンセリングで呼ぶまで待っていてください」
「あ、はい、ありがとうございました」
ハヤァイ!
前から思っていたのだが、このクリニックめちゃくちゃ回転がいい!
良いことなのか悪いことなのかはわからないが、私のようにとりあえず薬をください系の患者にはいいクリニックだと思う。
それに今はT先生ではなくカウンセラーのOさんに話を聞いて頂いている……。
いそいそとカウンセリング室へ向かった。
中で迎えてくれたOさんは、穏やかな笑みで私を見つめた。
「草森さん、どうされますか?」
おや!?
どうされましたか、ではなく、どうされますか!?
ちょっとまごまごしていると、
「カウンセリング内容と今後の方針といいますか、どういったことを目的にされてますか?」
説明を追加してくれたので飲み込めた。
だがしかし……。
「あ〜〜〜実はね!T先生とOさんにクソ萌えてましてね!資料というかネタいうか興奮材料というかね、そういうのが欲しいんですわ!!」
なんて言うわけには……いかない! それに下心のみでカウンセリングをすることにしたわけでもない!
私は初心を思い出し、穏やかなOさんに向き直った。
「不眠やこれまでの数々の不調を………ぶり返さないように……したいんです………」
午前四時頃に強制的に起きていた半年前……急な動悸や謎の息苦しさが辛かったあの時……胃の圧迫感でまともに座ってられなかった最悪の時間……。
もうマジで二度とあんな目にあいたくない……!!!!
私のケツイが伝わったらしく、Oさんはしっかりと頷いた。
「不眠改善のために今現在されていることなどはなんでしょう?」
「えっと……禁煙は四ヶ月ほど続いてます」
「それはすごい! 他には?」
「カフェイン量を減らして……散歩を行なうようになりまして……」
「ふんふん、いいですね散歩。食事などはどうされてます?」
「あっ、トリプトファンやGABAというものをとるために、半年ほど前からバナナやトマトを定期的に摂取していまして」
「おお、すごい……!ものすごく頑張ってらっしゃいますね……!」
「えへ、えへ、今は筋トレも……スクワットに膝つき腕立て伏せになかやまきんに君の筋トレ動画に……」
「本当に色々されてるじゃないですか、素晴らしいですよ!」
誠に〜〜??Oさんめちゃくちゃ褒め上手じゃね〜〜〜???
私はすでにご機嫌マックスだった。Oさんはそんなニッコニコの私と手元のメモを交互に見てから、おもむろに口を開いた。
「これだけされていると、やれることは限られてくるなと思うのですが……」
「あ、はい、えーと、深層心理にアプローチ?とか?ですか?」
Oさんは薄く笑いながら首を振った。
「いえ……瞑想しましょう」
そう言ったあと、机の下からスマートフォンと「瞑想について」と冒頭に書かれている紙片を取り出した。
私はブディズムの気配に唾を飲み込んだ。
そしてOさんと共に、瞑想をすることになるのであった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます