第35話 暴かれた真実の光

カウントダウンタイマーが残り10秒を切った。

緊迫した空気の中、美羽は叫んだ。

「佐藤君!あなたならできる!あの日、学園祭でみんなが楽しそうにしていたことを思い出して!あの時、あなたが本当に守りたかったものは何!?」


美羽の言葉に、佐藤健の目に光が戻った。

彼は、学園祭で自分が作ったオブジェの前で、生徒たちが笑顔で写真を撮っていた光景を思い出した。

彼の復讐は、本来、鈴木先生への恨みを晴らすことだったはずだ。

しかし、このままでは、多くの無関係な生徒たちが傷つくことになる。


佐藤健は、意を決して元教師に駆け寄り、そのキーボードに手を伸ばした。

元教師は抵抗するが、佐藤健は必死にキーボードを叩き、システムを停止させようとする。

その間に、五十嵐刑事も加勢し、元教師を拘束した。


そして、カウントダウンタイマーが「0」になった瞬間、モニターに表示されていた個人情報が、一瞬にして消滅した。

システムは、佐藤健の操作と、五十嵐刑事の迅速な対応により、間一髪で停止されたのだ。


元教師は、悔しそうに顔を歪めた。「なぜだ…なぜ私の邪魔をする…!」


佐藤健は、震える声で言った。

「僕は…僕はこんなことをしたかったんじゃない。僕はただ、鈴木先生に…」彼の言葉は途切れたが、その目には、再び光が宿っていた。


事件は解決した。

元教師は逮捕され、彼のサイバー犯罪グループも壊滅した。

桜井楓の失踪事件に端を発した一連の事件は、SNSの闇、人間の復讐心、そしてデジタル技術の危険性を浮き彫りにした。


事件解決後、美羽は健太といつものカフェでドーナツを食べていた。

健太は、今回の事件で自身の技術が多くの人を救ったことに安堵していた。

美羽は、目の前のドーナツを一口食べ、ふと空を見上げた。


「ねえ、健太。世界には、まだたくさんの『影』が潜んでいるわ。」


美羽の瞳は、未来を見据えて輝いていた。

彼女の「SNS探偵」としての新たな一歩が、今、確固たるものになった。

彼女の探偵としての人生は、まだ始まったばかりだ。

新たな事件が、彼女を呼んでいるかのようだった。

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