第34話 カウントダウンの果て

カウントダウンタイマーが刻々と時を刻む中、美羽は焦っていた。

学園の生徒たちの個人情報が流出するのを、このまま黙って見過ごすわけにはいかない。

美羽は、健太に無線で指示を送った。

「健太!このシステムを止めることはできないの!?」


健太の声が焦燥感を帯びて返ってきた。

「美羽、元教師のシステムは、通常のセキュリティでは突破できない。僕が直接アクセスして、バックドアを閉じるしかない。でも、時間が…」


元教師は、美羽たちを見て、嘲笑を浮かべた。

「無駄だ。私のシステムは、お前たちのような素人には止められない。そして、私の復讐は、もう誰にも止められない!」彼は、モニターに映し出された学園の生徒たちの顔写真が次々と点滅する様子を、満足げな表情で見つめていた。


美羽は、佐藤健に目を向けた。佐藤健は、震える手でモニターを見つめていた。

彼は、元教師の恐ろしさに気づき、良心の呵責に苛まれているようだった。

美羽は、佐藤健に語りかけた。

「佐藤君!まだ間に合うわ!あなたの手で、この暴走を止めることができるのよ!あなたは、こんなことのために、鈴木先生に復讐したかったわけじゃないでしょ!?」


佐藤健の目に、一瞬、迷いが浮かんだ。

彼は、元教師の命令で、学園祭のポスターの件を木村優太に伝え、彼を復讐へと唆したことを思い出していた。

しかし、ここまで大規模な犯罪に発展するとは、想像もしていなかったのだ。


その時、五十嵐刑事が、元教師に隙を見つけて一気に距離を詰めた。

彼女は、元教師の手元にあるキーボードに手を伸ばそうとしたが、元教師はそれを阻止した。二人の間で激しい攻防が繰り広げられる。


カウントダウンタイマーは、残り30秒を切っていた。

美羽は、このままではすべてが終わってしまうと直感した。彼女は、残された最後の手段に賭けることを決意した。

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