第4話居酒屋と男と男と。
「先輩、まだ残るんですか?」
「ん?あぁ、この書類まとめたら帰るわよ。」
後輩君に声をかけられてふと時計を見ればもう21:00を回っている。
どうりで外が暗いはずだわ。印刷した書類を机でトントンと叩いて整えてファイルにしまえば、ふぅーっと疲れが口から溢れてきた。
さて。私も居酒屋にでも寄って帰ろうかな。
「あんまり無理しないで下さいね。払い屋は俺が見つけておくんで。」
「事件が減れば休めるんだけどね。その件は任せたわ、私も帰る。」
「はい!俺もそろそろ約束の時間なんで失礼します!」
「約束?女か。」
「違います!その...先輩には言いにくいんですけど花渡さんから呑みに行こうと無理やり約束こじつけられて。」
「あのストーカーもどきか。あんなのの誘いを断れないようじゃぁ彼女なんて一生無理ね。」
「ゔっ。気にしてるのに。」
ショボンと肩を落として項垂れる後輩君を一瞥して荷物をまとめれば、タイミング悪い事に渦中の人物がコンコンって特班の入口ドアを叩いてる。
後輩君は気まづい顔で私を見た後顔面真っ青にしてた。
「よぉ流南!お前もまだ残ってたんだな!」
「...名前呼びは止めて下さいと伝えたはずです。用があるのはコイツでしょう、私は帰ります。」
「悪かったって!それよか帰りなら俺らと呑んで行こうぜ?今日遅れた理由とか聞きてぇしよ!」
「関係ないのでは?それでは」
「あ、ちょ!奢るから!」
「...」
「今回の呑みは全部俺の奢り!な?それならどうだ!」
「...ふっ。よかったわね後輩君。食い貯めておきなさい。」
「(先輩悪い顔してるなぁ。これきっと高い店行く気だ。)はいっす。」
奢りねぇ?ふぅん?
断ってもしつこいこの男に痛い目をみせてやりたいと思ってたけどこうも自分から死願してくれるなんて。
ちょうどいいからネットで有名な高級居酒屋にでも行って憂さ晴らししてこよう。
そしてその後、私の家を隈なくチェックして防犯を再確認しておかなくちゃ。
◇
警視庁から歩いて10分。目的通りネットで話題沸騰中の高級居酒屋に来て目をぱちくりさせる花渡。間抜けな顔で口角が歪んじゃう。
反対を押し切って入店してからは高い酒だけを頼んで呑んでたけどあいつの箸と注文は止まってしまった。
いい真顔ね。まったく。
「(先輩、容赦ないなぁ)」
「なぁ帰城。手持ちあるか」
「少しならありますよ。」
「よかった。ここの会計」「ここの会計も払えないような甲斐性なしじゃないわよね。」
「えっ。」
「違うわよね。」
「あ、当たり前だろ!?どうした帰城、もっと頼めよ!」
「えぇ!?いやでも」
「頼んどきなさい。私、トイレ。」
煽るように鼻で笑って聞けば躍起になってメニューを広げる花渡。カタンと立ち上がって2人の後ろの方向にある御手洗に向かって歩けば空気がピリついてる。なんで誘ったのよ。
これは帰りコンビニ寄って酒を買い直すしかないかなぁ。
「ん?...あんた」
「よぉ。意外だな、お前がこんな所に男と来るなんて。」
「よくもノコノコと顔出せたものね。左肩だけじゃ足らなかったかしら。」
「そう怖い顔するな。美人なのに眉間にしわ寄せすぎだ。」
「気持ち悪い。反吐が出る。」
トイレから出てきて席に戻ろうとすれば、いつからいたのかあの誘拐犯がほくそ笑んで待ってた。
そして私の目の前まで来て真正面から見下ろしてくる。
嫌なところで出会ったわね。ここは居酒屋、下手に暴れられない。
「警戒しないでくれ。今夜は何もしない。」
「ふん。犯罪者がどの口を」
「この酒はつまらないのだろう?顔に書いてある。送ってやるから荷物を持ってくるといい。」
「迷惑だわ。どいつもこいつも、鬱陶しいったら」
この男の数メートル後ろには私が座ってた席がある。あの2人はまだ気づいてないみたい。
男は目の前にあった体を避けて通り道を作ってからチョイチョイと指をさして荷物を取ってこいと合図を出した。
なんでこんな奴に。ありがたくともなんともない。
そう思ってドンッと体がぶつかったのも気にせず通り過ぎて席に近寄ったけど...。
今は間が悪かったみたいね。私の悪口で花渡が盛り上がってる。
さて。どう始末つけようか。
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