学園の女子を虜にするあの先輩は、家では幼なじみで彼女の私にだけ甘えてくる──この関係、誰も知らない。
@kuro0320
プロローグ
プロローグ この関係、誰にも言えない──
桐谷悠真(きりたに ゆうま)先輩は、学園中の女子が憧れる存在だ。
すらりとした長身、柔らかな微笑み、誰にでも優しい振る舞い。そして、バスケ部のキャプテンとしてもエースとしても活躍していて、その姿はまるで少女漫画から飛び出した王子様みたいだった。
でも――そんな彼のことを、私は誰よりも知っている。
「綾乃……今日、なんか疲れた。膝、貸して」
制服を脱ぎ捨てて、ソファに倒れ込む彼は、学園で見せるような完璧な笑顔はしていない。むしろ、猫のように甘えた表情で、私の膝に頭を預けてくる。
「……子どもじゃないんだから、自分の部屋行けば?」
「えー、ここがいい。綾乃の匂い、落ち着くんだよね」
頬を赤らめながら、私は彼の髪に手を伸ばす。撫でるたびに、彼は目を細めて心地良さそうにしていた。
こんな姿、学園の誰も知らない。
だって彼は、表では誰にも隙を見せない”完璧な先輩”だから。
だけど私は知ってる。悠真がどれだけ無理をしてるのか、どれだけ不器用で、甘えん坊で、寂しがり屋なのかを。
私たちは――幼なじみで、秘密の恋人同士。
でも、その関係は誰にも言えない。
もし知られたら、彼の評判が壊れてしまうかもしれない。私との関係が、彼の未来を邪魔するかもしれない。
だから、この関係は秘密にしなきゃいけない。
誰にも知られず、ただ2人だけでそっと、静かに愛を育てていく。
だけど。
その均衡は、ある日突然、崩れ始めた。
「ねえ、綾乃。私、桐谷先輩のこと、好きになっちゃったかも」
クラスメイトであり、バスケ部の仲間でもある高橋美咲が、そう笑顔で言ったとき。
私は、胸の奥で何かが音を立てて崩れるのを感じた。
私だけが知っているはずだった彼。
私だけの、秘密の恋。
それが、誰かに触れられてしまうかもしれない――
そんな予感が、確かに胸をざわつかせた。
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