第3章 仮面の裏側
槙村紗月の告発が拡散されてから数週間が経過した。ネット上では彼女の勇気を称賛する声と、逆に根拠なき中傷を浴びせる声が激しく入り乱れ、社会の注目を集めていた。
だが、紗月の心は次第に疲弊していった。思いがけない攻撃に耐え、身内からも疑念の目を向けられることもあった。彼女が持ち続けた闇の真実は、誰もが避けて通りたい忌まわしい過去だったのだ。
一方、佐伯美和は表舞台で華やかな笑顔を見せていた。慈善イベントでのスピーチやメディア出演。彼女はまさに“理想の女性”としての地位を固めつつあった。
しかしその裏で、美和は人脈を駆使し、警察やマスコミに情報操作を働きかけていた。槙村の信用を貶めるための隠蔽工作だ。彼女の目的は「秩序の守護者」としての自身の立場を守り、過去の罪を永遠に闇に葬り去ることだった。
紗月は、自身の記憶をたどりながら、あの夏の日のことを反芻していた。
教室の片隅でひとり泣きじゃくる少女。助けを求める声は誰にも届かなかった。周囲はただ、知らぬふりをしていた。権力に屈し、黙認し、加害者の顔色をうかがった。
彼女はそのとき決意した。二度とあのような理不尽を許さないと。だがその道は孤独と絶望の連続でもあった。
ある夜、紗月の前に一人の男性が現れた。ジャーナリストの小林誠司だった。
「君の勇気は認める。だが、このままじゃ潰される。僕の取材網とコネクションを使って、一緒に真実を掘り起こそう」
彼の声は熱を帯び、紗月の心に小さな希望を灯した。
だが美和も動きを止めなかった。彼女は会議室で手下に命じる。
「今後は、あの少女の過去の闇を徹底的に掘り下げるの。彼女の信用を失わせるのよ。できるだけ早く、完全に叩き潰す」
“秩序の名のもとに”犠牲者を作り出す冷酷な決断。
時間が経つにつれ、紗月と美和の戦いは激化していった。
真実の暴露が社会の常識を揺るがし、同時に欺瞞の仮面を剥ぎ取っていく。
人間の醜い本性が露わになるほど、二人の闇も深く絡み合っていく。
やがて、紗月は知ることになる。自分の中に潜む“告発者”としての狂気と孤独、美和の中に隠された“完璧な女”の裏側に潜む暗い影を。
二人の物語は、まだ終わりを告げない。
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