葉山、姫と休む。
しばらく飛び続けたジェラールは、野を越え森を越え川を越え、小さな村のそばに降り立った。その頃にはすっかり明るくなっていた。
「ジェラール、ありがとね〜!」
背から降りた俺たちは、朝日を浴び黒い体を輝かせ、どこかへ飛んでいくジェラールを見送った。
もう帰っちゃうの? もっと協力してもらえないの? とも思ったが、マリアちゃん曰く、ドラゴンを長時間操ることは難しいらしい。
「今日のことだって、事前に何回もお願いしてたんだよ〜!」
ドラゴンに助けてもらうには、入念な根回しが必要らしい。そりゃそうか。ドラゴン、プライド高そうだしな。
ということで、みんなで歩いて、そばの村に向かう。
正直、久々のオールで頭も体も重くて仕方がない。だがジョンソンもマリアちゃんも、さらにツエル姫まで元気にズンズンズンズン歩いていくものだから、俺もクタクタの体に鞭打って、なんとかついていった。
村に着くと、住人がわらわら寄ってきた。どうやら事前に俺たちが来ることは打ち合わせされていたらしい。予定通り姫と王が救出されたことに、みんな歓声を上げて喜んでいた。
ひと段落すると、俺たちは宿を借り、男女に別れ、レーナさんたちが来るまでそれぞれ部屋で休むことになった。
――そう、男女。
「あれ、ツエル姫、こっちは男部屋ですよ」
男部屋に入ってきてしまった可憐な姫。丁重に教えてさしあげると、姫は頷いて、背中のコルセットの紐を緩め、なぜかそのままドレスを脱ぎ出した。
「えっ、ちょっ」
華奢な肩が、鎖骨が、胸元が見えてきて――
「うわ、あの、姫、急に脱がないでください!」
露わになっていく白い素肌に、慌てて両手で目を覆う。するとベッドにゴロンと横になったジョンソンが、笑いながら声を上げた。
「落ち着けハヤマ、見ても大丈夫だ」
「んなことできないよ!」
「大丈夫よ。私は男だもん」
「私は男だもん?!」
思わずバッと手を下ろし、爆弾発言をしやがる姫(?)を見る。いつのまにか美しい姫(?)は、パンツ一丁になっていた。
「ま…………」
ーー凹凸の少ない上半身、ナニか膨らみを感じるボクサーパンツ。
確かに、確かにーー体は男のそれだった。
「ま、わかんねーよな! 姫が男だなんてな」
ジョンソンが腹を抱えて笑っている。
「…………」
まじで??
「……ツエル姫が……男……」
顔も声も絶世の美女なのに、体が男。
脳がバグる。
俺のトキメキ返せ。
開放的な顔をした姫(♂)は、腰に両手を当て、満足気に話し出した。
「ドレスって可愛いけど、コルセットがキツイのよね。早く脱ぎたくて仕方なかったわ」
「なるほどです」
――なにがなるほどなのかわからないが、とりあえず、寝よう。
体も脳も一気に疲れが押し寄せて、俺は白いベッドにダイブした。
俺のトキメキ返せ。(2回目)
「あら、ハヤマさんの電池が切れたわ」
「姫が男だと知ると、みんなこうなるんですよ」
――まだうすら明るい朝日の中。
姫とジョンソンの話し声を聞いているうちに、俺はいつのまにか眠りに落ちていた。
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