第31話 誇り高き勝者とお祭り騒ぎ その5
ヨネさんが式典会場から料理を運んでくれて、凛人たちは談笑しながら酒を飲んでいた。
リオは細身のスーツに身を包み、金髪を軽くなでつけたように整えている。その細身の印象とは裏腹に、スーツ越しでもわかる鍛え抜かれた体躯は、まるで雷神が振るうハンマーを支えるかのような力強さを感じさせた。
そして、リオを挟むように立っている二人のグラは...
......二人のグラ!!?
一瞬、目を疑った。そっくりな体格に、同じ顔と声。立っている姿も骨太で、まるで鏡を見ているようだった。
「ん? ああ、こいつは俺の兄だ」
「グリマルド・ド・セルノンです。弟とは違って、几帳面な方です」
「だ、そうだよー。兄のグリ、弟のグラだねー」
と、リオが通訳する。
弟のグラティアンと並ぶその姿に、凛人の目は輝いた。
双子の二人は、黒を基調とした礼服を着ていたが、体の厚みがすごすぎて、どんな服も筋肉の飾りにしか見えなかった。まるで“ファミリー語りながらアメ車で爆走”してそうな風格だ。ワイルド筋肉ここに極まれり。
「マジで双子かよ! すげぇ! 『グリとグラ』じゃん!!?
名前の由来とかあるの?」
質問に応じたのはリオだった。
「伝説の戦士から取った名らしい。グレイヴェルンに古くから伝わる、最強の双子の名を受け継いでるってな」
「伝説の双子戦士……!」
凛人は身を乗り出した。だが、次の言葉で固まる。
「……最強のネズミ戦士ね!」
「ネズ……ミィ!? こ、この世界にはネズミ人間も存在するのか!!?」
「はぁ? 馬鹿なの? そんな人間、いるわけないじゃないの。伝説の話だよ。」
と、マーヤがため息をついた。
「いや、だってドワーフは実在するんだろ!? ちょっと待て、エルフとかもいるんじゃ……」
「だからなんでドワーフとエルフとネズミが並ぶのよ! ほんと、どんな発想してんの?」
「わかるかよ!!」
わけのわからない伝説と、混乱する脳内のままに凛人は叫んだが――どこか心は弾んでいた。
「でも……エルフいるのかぁ……会ってみてぇ……!」
年甲斐もなくワクワクしてしまう自分が、ちょっと恥ずかしかった。
「その伝説、まだ続きがあるぜ」
と、リオが口を挟んだ。
「なんでもそのネズミ戦士、ドラゴンの卵を盗み出して、でかいホットケーキを焼いたんだと」
「はあ!? ドラゴンの卵!?」
「しかも卵の殻はあまりに硬くて、戦闘のときは盾として使ったらしい。武器は……そのとき使ったフォークとフライパン」
「……それってさ、完全に……」
凛人の脳裏に浮かんだのは、幼い頃に読んでもらった、あの絵本の光景。赤と青の帽子をかぶった、愛らしいネズミの双子――。
「……グリとグラじゃあねぇか」
思わずつぶやいた凛人に、皆が首をかしげた。
「いや、だからグリとグラなんだって」
…まさか、幼い頃に親しんだ絵本が、時空も世界も越えて、こんな形で残っていたなんて。
そんなバカな話、あるわけない。
……でも、この世界なら、あるかもしれない。
凛人はふっと笑った。
「……ホットケーキ、食べたくなったな」
「なんで、そうなっちゃうの?」
マーヤは呆れたように笑いながらも、どこか嬉しそうにそう言った。
笑い声が一室に広がる。
城の外では、まだ宴の音が遠く響いていたが、この部屋には穏やかな空気が満ちていた。
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