第15話 ほろ苦新メニューはいかが
「澪さん、俺に何か言う事あるっすよね……」
「はい……ごめんなさい」
風呂を出た後にベッドに戻り、再び愛し合う。――ここまでは良かった。
澪さんのF●NZAで得た知識はとても偏っていて、求める内容があまりにマニアックだった。
そんなもんついていけるはずが無い。
散々俺で遊び倒した澪さんはとても楽しそうだったが、俺がダウンしてしまった。目を覚ました時は澪さんが正座で頭を下げていた。
ああ、これが所謂全裸土下座ってやつか。まさか自分の愛しい人のそんな姿を見ることになるとは。でも仕方ないと思えるぐらいに澪さんは終始ノリノリだった。
「まったく……。俺はもうちょっとゆっくりと関係を深めていきたかったっす。なんすか、“開発”って」
「うぅ、ごめんなさい。拗らせすぎたのは謝るわ。でも、男の人ってみんな好きなんでしょ? そういうプレイ」
「人によるっす! 少なくとも俺はノーマルっす!」
「ふふ、初めはみんなそう言うんだよ」
そう言ってけらけら笑う澪さん。ああ、この人全然反省してない……。
そういう澪さんの駄目なところを含めてこれから付き合っていくんだろうな。でも、変に意識して付き合いにくくなるよりは良いかなとも思えた。
次の日、お店の開店と同時に美冬がやってきた。
普段のラフな格好とは違い、男物のスーツ姿でお店にやってきた。コスプレか?
「ホント美味しい……。ここのコーヒーすごいよね。 毎朝これ飲めたら幸せだわー」
「ふふ、美冬ちゃんありがとう」
「いいえー。今日は営業に来たんだよ、オフィシャルな感じするっしょ」
「ああ、男装っぽいと思ったらリクルートスーツか。家業クビになるなんてただ事じゃないな。なにやらかしたんだ?」
「ばっか! ちげーよ! 営業だっつってんだろ! ――コホン。ここのコーヒーに合わせるのにスイーツが完全に不足してるよね。弊社のケーキはいかがかしら?」
営業トークが全く出来てない。なんだその似非お嬢様は。
まあでも、その話は俺の方からお願いしたかった話でもある。美冬は気を利かせてくれたんだな。いいやつだなあ。
「ありがたい話だけど、どういうものが良いんだろうね?」
「学生さん取り込みたいって言ってたっしょ。だったら映えがあって単価を抑えていくのが良いだろうからさ、ブラウニーなんてどうかな? あーしの練習も兼ねてるんだけど、結構いい出来なのよ! うちの店の名前も出せば宣伝にもなるしウィンウィンじゃない?」
そういって保冷バッグからケーキ箱を取り出す。
その中には数切れのブラウニーがきっちり詰まっていた。
「これにパウダーシュガーをぱぱっとかけてお出ししよう。生クリームを添えても良いかもね。市販のホイップクリームでも良いだろうけど、でもやっぱ美味しいのは生クリームだよね」
そういってブラウニーを3等分に分け皿に盛る。パウダーシュガーと生クリームを盛り付け、見目麗しいスイーツの完成だ。
「いいね! ここにミントの葉っぱとか添えたら映えそうだ」
「ね! 学生ウケするんじゃないかな! 原価も結構抑えられるからね」
気になるお味の方はいかがかなものか。
チョコの香りがふわっと漂う。これは絶対コーヒーに合うな。
パクリと食べてみると、口に広がるカカオの香りと生クリームのふわっとした甘みが絶妙だ。併せてコーヒーも飲むと、豆の香りとカカオの香りが融合し、お互いの良さを引き出し合うように感じた。端的に言えば相性は抜群だ。
澪さんと美冬も納得の様子。
「美冬、これすごいな。良いチョイスしてるじゃん」
「美味しいね、このブラウニー。コーヒーとばっちり合ってる!」
「気に入ってくれてよかったよ! これなら多少日持ちもするし、あーしが作れるから、うちの店の負担にもならないしね」
「美冬の負担になるじゃん。良いのか?」
美冬はニッとイケメンな笑顔を見せてくる。
「言ったっしょ、一枚噛ませろって。湊だけ面白そうなことやってんのズルいし。今はブラウニーだけだけど、学生さん増えたら第二弾も考えてっからさ!」
ホントイケメンだなこいつは。
澪さんと話し合った結果、ティータイム限定として1日10食限定で提供することにした。
配送は週二回、美冬が原チャリで持ってきてくれる。配送料はコーヒーご馳走で手を打ってくれた。
「あは、まさにウィンウィン! この店のめっちゃ美味しいコーヒーが定期的に飲めるんだもの、労力は惜しまないよ!」
「サンキュ、美冬にしては良い営業したな」
「もっと素直に褒めて良いんだよ。まあ湊だからしゃーないねえ。澪さんも結構苦労してるんじゃない?」
振られた澪さんは少し思案顔。――また碌でも無いことを言いそうな予感に思わず身構える。
「んー、そうでもないわねえ。湊くんはわりと素直なのよ。美冬ちゃんの前では突っ張っちゃうのかもしれないわね」
意外そうな顔をする美冬。そして俺の顔を見て口角を釣り上げニンマリする。そのちょっと悪そうな顔に、逃げようとするところをがっちり首根っこを掴まれてしまう。
「そっかあ、湊はあーしの前では素直になれないのか。んふ、ういやつめ」
そう言って俺の頭をヘッドロックする美冬。存在感のない胸がごりごり当たってちょっと痛かった。
まあこれくらいで済んだのは幸いかもな。
とにかく美冬には感謝だ。学生さん達まっててね!
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