第3話 海賊と少年の出会い
結論、アルフレッドの見当は的中していた。小道から大通りの先を窺う白い少年の背中に近づき、顔を覗くようにしながら明るく小声をかける。
「やあ、少年。ご機嫌いかがかな?」
「はぁ……っ!? あ、あんた――」
多少は驚かすつもりだったが、その予想を超えた驚きを見せられ、アルフレッドは慌てて少年の口を塞ぐ。大通りに近いため、まだ海軍が捜索していると思われた。
「しー、静かに。各方面にバレちゃうぞ。おまえも困るだろ? 変なハンターに追われ、海賊にも追われちゃあ大変だ」
「っ……む……ん……、うん」
少年の頷きを確認し、彼は口元から手を離してやることにした。そして、自分は無害だと示すべく、両手を顔の前に開いて見せる。
「なにをしたか俺は知らないけどな、ちょっくら落ち着けって。な?」
アルフレッドが手を下ろすと、少年は彼のそばからサッと離れて後ずさる。
「あ、あんたは、何者なの? なんの用があって、僕に話しかけてきたんだよ?」
「それはあれだな。俺はおまえを勧誘したい」
「か、勧誘? なんのさ?」
突然の話に少年は戸惑う。怪訝な感情が拭えない顔をしているが、アルフレッドはまるで構わずに話を続けた。
「さて、選択肢だ。その一、売り物にされる。その二、海賊にこき使われる。その三、俺たちの仲間になる。さあ、どうする?」
「いや、だって、僕はあんたのこと信用したわけじゃ……」
「まあまあ、ちょっくら信じてついてこいよ。まずは、こんな暗くて狭いところから移動しようか。ほら、あっちの方に――……あ」
少年に説明しながら、アルフレッドは歩き出したのだが。ちょうど小道を出たところで、巡回していた軍服の男に見つかってしまった。バッタリと海軍に遭遇してしまった事実に、アルフレッドは驚いた顔をする。
「まじかぁ、これはさすがに誤算だぞ」
「か、海軍……!? あんた、一体――」
彼らと同じく目を丸くしていた海軍だが、しばしの間を経てからハッとして、持っていた笛をピーッと鳴らしはじめた。
この大通りの先にあるのは港町だ。当然、海軍が山ほどいるし、すぐにでも集まってくるだろう。例のエリート三つ編み海軍もいるだろうし、ここで囲まれるのは大変よろしくない。
「うん、まずい! 少年、その四だ。無事に家へ帰りたいなら、三つ編みの海軍に泣きつくって手もあるぞ。んじゃまあ、がんばれ?」
アルフレッドは早口で伝えると、笛を鳴らした海軍とは反対方向に走り出していった。
「はあ!? あ、ちょっと!」
咄嗟に少年は右手を伸ばすが、彼の姿はもうすでに遠い。しかも、後ろからゾロゾロと海軍兵たちが追いかけているとなれば、反射的に下がるしかなかった。
「なんなんだよ、もう……。でも……名前くらい、聞いておけばよかったかな……」
少年――カイルは、包帯が巻かれた左の手首をさする。心拍数が上がっていて、小指の付け根がズキズキと熱くなっていた。
けれど、今にも泣きそうな気持ちでいるのに、その気持ちは恐怖だけではないような気がしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます