魔法少女の契約をしたくない妖精さん
老いには逆らえん
新たな相棒編
第1話 怖いお姉さん
魔法少女が当たり前となりそれを契約によって生み出す妖精もヒーローのように扱われ、魔物との争いもエンタメになりつつある日本の隅っこで丸まっている小さな蜘蛛…
はい私、アラーネアですね。
私が今住んでいる日本では、今日も今日とて街のビルの広告塔や何やらで魔物の被害やそれを救った魔法少女と私の同類たる妖精の活躍が、面白可笑しく宣伝されてます。
本来であれば、この世界で活動してる以上私もあの画面越しに媚び売ってる同僚と同じく傍らには少女の姿が居ます。
しかし、残念ながら私の視界には路地裏のジッメジメとした暗さとカーペットのように積もった埃しか映っていません。
昔なら相棒の少女とアイツらを超えて鼻をあかしてやると意気込み、その日の目標を示しあっていましたが今では遠い日のこと…
「私みたいな底辺妖精なんて居ない方がマシでしょうねーーー!!!アハハハハ、は、……」
はい、こんなところで一匹叫んでいても虚しいだけですので止めましょうかね。
以前と違い何もやることがありませんし少し振り返りでもしますかね?
「問いかける相手はもう居ないのですが、そんなの今更です。ボケとツッコミは全部自前でやるのが流行でしょう、私はそう決めました」
習慣となってしまった独り言は終いにすると、私達妖精はこの世界に逃げた魔物を追ってきた地球外生命体です。
その為、国によっては魔物と混同されたり実験動物扱い…と散々な目にあっていますが私が住む日本は大当たり。
異物である私達がこの世界で存在を概念として安定化させる作業、平たく言うと契約で魔法少女を生み出すわけですが意味不明な程にこの国では簡単に受けいられました。
そんな安全な日本では存在を安定させられないだけなので、今の私の如く怠惰に過ごす分には問題が無いのです。
しかし、怠惰という底辺から抜け出し魔物撲滅の使命を果たす為に私以外の妖精達は生命への鋭い探知能力で日夜情報収集を…、……
「っ!?この反応は、魔法少女になる前の一般人が魔物と戦ってるんですか??」
情報収集を〜なんて考えながら探知して得た、魔法少女の素養を持つ人間が魔物三体から追われているという結果に頭がクラクラします。
何時もなら見過ごし増援を待ちますが寂れた路地裏近くには、魔法少女の気配はありません。
なので、ここは私が助けるしかないようです…いくら堕ちてやさぐれたと言っても未来の魔法少女を見捨てる程に性根は腐っていません。
そう考えてる間にも私の身体は、昔のように現場へ駆けつけようと無意識で急いでしまっているので職業病ですかねぇ。
「到着っと…早く助けたいですが、突然現れては魔物と勘違いされる可能性が無きにしも非ず。それに、私は弱いので魔物が油断した時畳み掛ける漁夫の利作戦にしましょう」
なので、久しぶりに走って疲れた身体を休ませても問題は無いと言い訳しつつ衰えを感じながら現場を見渡せる位置に突っ伏しました。
それでは第六回戦闘実況のコーナーです。88888〜、言葉に出して敵の情報を整理しつつ作戦を立てるのは経験上目的が明確になるので効果的です。
何となく突撃!が許されたのは相棒の少女が居る時だけで、一匹蜘蛛になってからは同僚から卑怯者と後ろ指さされて戦う毎日ですよ…
「Aさんは逃げ回るのを止めたようですが、体力が尽きちゃったんですかね。まあ、魔物から生身で逃げていたんですから十分凄いことではありますよ」
魔法少女になれるのは妖精の相性的に魂に穢れがない女性限定で、身体能力は関係ない為Aさんのように魔物の攻撃を受け流すなんてそんなことは一般人と同じく出来な、出来ーー
「何でただの人が魔物の攻撃を逸らせたんですか?!もしや、凄く強いスポーツ選手か軍人でしょうか…見覚えがあるような気がしますし」
「それくらい動体視力が良くても到底あの速度全てに反応出来るわけが、うわぁ゛三体同時の攻撃まで避けてるー〜。アハハ、やべぇ奴に出くわしちゃったかも」
魔物の攻撃をその腕を掴んだり蹴ったりして素手でいなし続け魔物同士の攻撃が当たるように、上手く誘導までしてるAさん。
もうここまで完璧な戦闘をされると、凄いと思うよりキモイレベル…
でもこれでは長期戦になるので体格の良い魔物よ方に分があり一応?私の補助も要るかな〜、要らないなら疲れた意味が〜と思っちゃいます。
ちょっとは苦戦しねぇかなと考え始めていると、私の思いが伝わったかのように三体の魔物がAさんを押し潰すかのように同時に体当たりをしました。
これはピンチ!やっぱりいくら強くても私が居ないと人間さんは大へー……えっ、なんでしゃがんだ次の瞬間に魔物の頭を飛び越えてるの?
衝突した魔物の頭を足場にしながらズボンへ手を伸ばすなんて、魔物よりフィジカル鍛えちゃってるじゃないですかヤダー。
「私が来たのは無駄骨だったみたいだなあ、おっ、今度は何だろう。あの形状的に鉈かな?」
ブカブカな服装とマントで隠し、足に括りつけていた鉈を振り上げるAさんに後頭部を力強く踏み込まれ前傾姿勢になる魔物達。
その無防備になった首目掛けて彼女は鈍く輝く重そうな鉈を、重力に従って振り下ろします。
「一匹」
「二匹」
「終わり」
それまで黙ってたくせに急に喋らないで下さいよAさん、一匹と呟きながら頭を首とお別れさながら切り落とすの怖過ぎです。
しかもなんですか、切り落とす過程で角度がズレたのを利用して二匹と呟いた時には下から首を刈り取るなんて超絶技巧…
その上で、力を失って倒れる二体の魔物の胴体を呆然としてる三体目にぶつけて倒れたところを無感情に鉈を再度振り下ろすなんて。
昔の相棒が魔法少女の形態になったとしても、こんな反則的な動きは不可能でしたよ。
…これまでの人間離れした動きからして、この人は覚醒者なんでしょうね。
魔物と妖精により活性化した魔力を、自身の才能で操れる正に一握りの天才達。
「魔法少女の素養がある覚醒者なんて聞いたことが無いんですが、本当に私の助けは要らなそうなのでここは退散「待ちなさい」っ?!」
「そこの妖精さん、居るのは分かってるのよ。悪いようにはしないから僕のところまで降りてきてきて、そっちから来ないならーー」
「いきますいきます!!不肖アラーネア只今、参上致しましたああ!A様のご命令とあれば何でも聞きますので命だけは何卒ぉぉ」
どうやって隠密が得意な私を見つけたかは分かんないけど、覚醒者に舐めた態度なんてとったら殺される!
あの子との約束もあるしこんな女に無慈悲に殺されるなんて怖いから、過去最高と思える速度で下に飛び降りて平伏のポーズです…靴でも何でも綺麗にするので私を虐めないでぇぇ。
これが生涯を共にする彼女との出会いとなったが、恐怖で何を言ってるかも分からなくなっていた私には当然知る由もない話だった。
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作者のやる気に繋がるので気が向いたら、♡や☆評価の程宜しくお願いいたします。
半年間気づけなかった間抜けな私と違い皆さんはお分かりでしょうが、目次欄の隣りにあるレビュー欄で+を押すと1~3の☆で称えることが出来ます。
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