第31話忠告
「公爵、頼まれていたものだ」
チャールズは、わたしから視線をそらすと指を鳴らした。
先程の男性が、紙の束をコリンに手渡す。
「ありがとうございます」
コリンは、紙の束を受け取ってから謝辞を述べた。
「ミヨ、忠告をしておこう。おまえの心意気や信念は、
チャールズが言っているのは、叔父一家のことである。
彼のその忠告は、耳も心も痛い。
わたしは「借金を返済する」といきがっているものの、正直なところ自信がない。借金はかさむばかりで終わりがまったく見えないから。
縁を切りたい。いっそ屋敷から放り出して欲しい。あるいは、永遠に戻りたくない。
たしかに、心と頭のどこかでそう願っている自分がいる。
「公爵とその紙の束を見、今後のことを決めればいい。それと、公爵。その子は、はやめに施設に預かってもらった方がいいぞ。なんなら、息のかかっている施設を紹介しよう」
チャールズの太短い人差し指が指したのは、ノーラである。
ノーラが身をくっつけてきたので、その肩に腕をまわした。
年齢の割には肉がついておらず、骨ばった両肩が痛々しい。
「その子のことをほんとうに考えるのなら、大人の事情に巻き込むな」
「それは……」
コリンが言いかけたのを、チャールズはごつい顔をかすかに横に振り、それを制した。
「すでに巻き込んでいる。だろう? おいおい、そんな顔をするなよ、クレイグ。おれの轍を踏ませたくないから忠告するだけだ」
彼は、つぎはクレイグに言った。
というか、チャールズとクレイグって知り合いなの?
いまのチャールズの言い方は、そんなフランクさが感じられた。
って思っている間に、チャールズが話を始めていた。
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