第12話 恋人はいますか?

「いい子だから、少しだけ留守番をしていてくれ」

「うーっ。わかったの」


 見た目の割には精神年齢が幼いんだよな。

 納得してくれたから、カセットコンロの扱い方を教えた上で家を出た。

 山裾にある俺の自宅から村の中心に向かう。

 道は、コンクリートや砂利で舗装はされていない。

 獣道とは言わないが、踏み固められた土があるだけで、歩きやすいのかと聞かれれば、異世界で10年以上暮らしていたのなら気にならない程度なものだ。

 村の中心近くのあばら家に到着したところで、ドアをノックする。

 すぐにドアが開く。


「カズヤ!」

「お、おう。今、きたぞ」


 ニコリと微笑みながら、背中まで伸ばしている灰色の髪を三つ編みにして背中に伸ばしているリリカが俺の腕を掴んで自宅に引きずりこむような形で、彼女の家に入る。


「もう、無理矢理は良くないって何度も言っているのに」

「ふふーん。カズヤも役得だとは思っているでしょ?」

「そこで、俺に振ってくるのはキラーパスっていうんだぞ」

「カズヤって、昔からよくわからない言葉遣いするよね?」

「どうもごめんなさいね。カズヤさん」

「いえ。アリエさんのせいじゃないので気にしないでください」

「ふふっ。ありがと」

「カズヤは、こっち」


 板の間に通されるが、先に座ったリリカに腕を引かれたこともあり、無理矢理、彼女の横に座らされる。

 そして、リリカの母親であるアリエさんが差し出してきたのは、一般的な庶民が口にする麦粥。

 味も微量な塩だけなので、それだけしか知らない人にとってはご馳走と呼べるもの。

 ただし、通販スキルでカレーを食べている俺には物足りないと感じてしまう。


「そういえば、カズヤさんは、エリナさんとは、どうなったのかしら?」

「ぶっ!」

「カズヤ、大丈夫!?」


 リリカが、布で俺の口元を拭ってくれる。


「あ、ああ……。大丈夫だ。いきなりのことで驚いただけだ。そうだな……」


 俺は村から出たあとのこと。

 冒険者パーティを結成したこと。

 何のスキルも持っていなかったがパーティの荷物持ちと買い物担当、ポーションなどの雑貨を作って金銭を得ていたことを説明し、最後はエリナに罵倒されてパーティから追放されたことを説明した。

 しばらく、静まり返った室内。


「ひどい! エリナってば酷い! 大変だったよね? カズヤ」

「確かに大変だったが、いい経験だとは思っている」


 人を安易に信じてはいけないという教訓が身についたからな。

 それは日本でも、この異世界でも、結局は何も変わらなかったという証拠だからな。

 何よりも、この世界の司法は存在しているだけで、権力に簡単に屈してしまうので、あってないようなものだ。

 貴族に逆らう=死

 これは、この異世界では真理のようなものだ。

 だからこそ、俺は借金を必死に返済しようとしているわけだ。


「そうなのね……。カズヤは強いね」

「別に強くなんてないさ」


 俺は麦粥を食べながら答える。


「それでカズヤさんは、良い人とか見つかったりしたのかしら?」


 リリカの母親であるアリエさんが聞いてくる。


「とくにいないですね。今は――」


 そもそも精神年齢は40歳を超えている俺が結婚を前提に付き合える人が何人いるのか見当もつかない。


「そうなんだ……、ねえ! カズヤ」

「何だ?」

「もしよかったら私とかどう?」


 そうリリカが提案してきたが、


「いまは、そんな気持ちにはならないんだ」

「そうだよね……。村長の孫のエリナに酷い扱いをされたんだものね」

「すまないな」






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