第3話 通販スキルを使ってみよう。

 森の中で倒れていた少女ティアを連れて、俺は急いで始まりの村へと戻った。

 自宅へと戻りドアを開ける。

 中に入れば、やはり何の掃除もしていないので、埃臭い空気が、俺を出迎えてくれる。


「女の子を拾うなら掃除を優先しておけばよかった」


 まぁ、今更、言ったところで意味の無い事だけど。


「はぁー。暗いよな……。ドアからしか入ってこない明かり。すでに夜に差し掛かりつつあるので完全に日が暮れて暗くなる前に火をつけて明かりを確保したい」


 家のドア前で考えていると、服裾を引っ張られる。


「どうした? ティア」


 見た目は17歳前後の少女だが、よくよく考えたら14歳にも差し掛かっていない俺からしたら外から見たら俺の方が弟に見られるのかも知れないな。

 実際、身長が150センチ前後の俺と比べてもティアの身長は160センチちょいあって、第三者から見たら、ティアの方が姉に見えるだろう。


「入らないの?」

「ちょっと掃除が終わってないけど、いいか?」

「うん」


 まぁ、家の中に入らないという選択肢はないからな。


「ここが俺の家で、両親は既に他界しているから、俺しかいないけど大丈夫か?」

「うん。大丈夫」


 男女の意味で聞いたんだが、即相槌を打ってきたことを考えると、深くは考えてはいないみたいだ。

 家に入り何とか明かりが確保できないかと考えるが、


「そういえば、幼馴染のエリナと村を出る前に、燃えそうな木材は全部、村の人たちに寄付したんだよな……。もう村に戻ってくることはないと思っていたからな。そういえば……」


 今の俺には通販スキルがあった。

 燃やすモノがないのなら通販スキルを使って明かりになるようなモノを買う事もできるんじゃないのか?


「でもな……」


 拾ってきたティアを見る。

 家の中をキョロキョロと興味深そうに見ている。


「まぁ、大丈夫か。なんだか記憶喪失みたいだし」


 通販スキルを発動させる。

 操作はタッチパネルを押すだけでいけそうだ。

 

「何か試しに買ってみるか。明かりになるような物はと……。照明は、電気がないから難しいか。そうなるとキャンピング用品を選んだ方がいいな」


 俺はアイコンをクリックしながら検索をする。

 目の前には、検索欄を選ぶと半透明なキーボードとマウスが空中に生まれる。

 それを使い、文字を入力する。

 

「電気がない場所で明かりを取るとするとランタンだな」


 文字を入力した上で決定ボタンを押す。

 すると1万件以上もの商品が、検索項目に表示される。

ウィンドウ画面には無数のランタンが表示されている。


「へー、セール品とかタイムセール品とかあるのか……。まるで、地球の通販サイトみたいだな……。一番、安いランタンだとLEDで200円か。買ってみるか」


 ランタンを選んで、カゴに入れたあと購入のボタンを押すとエラー音が鳴る。


「購入できないのか」


 だが、購入できないというバグがあるとは思えない。

 何せスキルとして発現したものなのだ。

 何かしらの利用方法があるはずだ。

 購入ボタンを押しても、エラー音が鳴るだけで購入ができない。

 何度推してもエラー音。

 そこで俺は残金が0円と書かれている項目があることに気が付く。


「これって、金が必要なのか……。当たり前だよな。等価交換は普通だからな。そのくらいは異世界に転生してきて分かっている。魔法を使うには魔力が必要なものだ」

「大丈夫?」


 ティアが、いつの間にか俺の傍に来ていて見下ろしてきていた。

 その瞳には慈愛の色が見えるのは気のせいだろうか。


「ああ、大丈夫だ」


 どうやら、俺の通販スキルに表示されるウィンドウ画面は、ティアには見えないようだ。

 

「――ん?」


 そこで気が付く。

 通販スキルの中に、換金というボタンがあることに。

 換金ボタンをクリックすると、大きな四角い窓が開いている通販ウィンドウの横に出現する。


「これって、もしかして、このウィンドウにアイテムを入れて換金するのか?」


 直感的に理解できる。

 家の中を見渡す。

 換金できるようなアイテムは、必要最低限の物以外は村の皆に寄付してしまったので何もない。


「あ! 薬草があるな」


 アイテムボックスから薬草を取り出して、ウィンドウに入れる。

 ピロリンという音が鳴る。

 すると別のウィンドウが開く。


 ――薬草を一つ換金しますか?

 ――価格は1万円になります。


「1万円か……。もちろん換金するしかないよな」


 だって換金する方法が薬草しかないし。


「よし、換金と――」


 チャリーンという音と共に残金に1万円という文字が表示される。


「あとは……、ランタンを決済画面に映して購入と――」


 もう一度、チャリーンという音と共に残金が9800円になり、目の前の空間から段ボールが出現して足元へと落ちる。

 段ボールには、どこの店からという情報ロゴが書かれていない。

段ボールを開けてみれば、黒い色のLEDランタンが入っていた。


「そういえば、商品の色指定はしてなかったな」


 ランタンを取り出して明かりをつけようとするが、明かりがつかない。


「ま、まさか不良品か!?」


 思わず、そんな考えが脳裏を横切るが、新品のランタンに見えるから、それはないだろう。

 そうなると、電池が入っていないだけか。

 たしかにLEDランタンだが、電池がないと明かりはつかないよな。

 異世界で14年近くも暮らしていたので、完全に地球の現代文明のあり方を忘れていた。

 電池を、通販スキルで購入し残金が9000円になった。

 届いた段ボール箱から電池を取り出したあと、電池をLEDランタンに入れて電源をONにする。

 すると、明かりがつく。

 久しぶりに見る文明の利器の明かりに目を細めつつも、一つの200円という安いランタンでも、2LDKと同程度のログハウス調の家の中は、よく照らされた。

 ただ、光源が一つしかないので、影もよく出来る。


「何個か買って部屋に吊るしてみるか」


 さらに5個、LEDランタンを購入し、家の中の天井からランタンを吊るす。

 もちろん、天井から吊るすための落下防止ワイヤーホルダーと、金槌に釘と脚立も一緒に購入。

 一瞬で、チャージした1万円が消し飛んだが、それは腐るほど手に入れた薬草を換金すればいいので問題ない。

 全ての部屋の天井から明かりのついたLEDランタンを吊るし終えると家の中は素晴らしく照らされた。



 

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