纒子を追う友人ふたりが、おいおいまさかと顔を見合わせる。

 纒子を尾けた先で彼女が出会ったのは、三十路半ばのソース顔。誰あろう、狼煙谷のろしやじんだ。


 纒子からすればなんの事もないのだが、宵子朝夏にしてみると、近頃様子の変わった友人が加齢臭の漂う中年男と待ち合わせ。よくない想像が働くというものだ。


「……纒子のパパ、あんなんだっけぇ」

「こないだ、あいつんで親父さんとは会っただろ。もっと塩顔だった」

「……じゃあ、あれって」

「あの纒子に限ってか? あやしいもんだが」

 纒子の異変を鑑みるに、なにかあったのは確実なのだが。


 こそこそとしている内に、新たな人物。V4エンジンを鳴らすと共に。路傍へ停まるドゥカティ・ディアベル。

 颯爽と降り立つライダースーツ、ヘルメットを脱ぎ払えば拡がるキューティクル。


「おいなんだあの美人。腰の位置がスカイツリーかよ」

 タンデムシートには、ランドセルを背負った男の子。

「あの子、可愛い」

「子連れかよ、あの腰で?」

「朝夏、キモいよ」

「バカお前、あの腰付きで経産婦だったら詐欺だろ」


「纒子、どういう関係だろ」

 ソース顔の中年男、セクシャルライダー、天使顔の男子小学生。濃ゆい顔触れ、どういう繋がりか勘繰りたくなるのも無理はない。


 纒子にとっては、野良ミミックの情報を狼煙谷から貰い、佑々ゆうすけと組んで狩りに向かうための待ち合わせだ。

 宵子と朝夏からしてみると、三者三様誰に転んでも纒子の趣味が危うく視える。友人として見守るべきか、止めるべきか。


「あ、男の子と」

 纒子が佑々に手を引かれて、どこかへ行く。いや、あの道の向こうにあるのはたしか、ホテル街ではなかったか。


「よりによってお前がかい」

 三者三様揃う中で、ある意味最悪の選択肢。この場合、倫理的に危ういのは纒子のほうだろう。


「あれ、止めたほうがいいかな」

「当たり前だろ。纒子が犯罪者になっちまう」

 纒子を追え。彼女の淫行、もとい蛮行を止めるのだ。

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