三話 纒子を追え
1
「変だろ」と机に頬杖突いたのは、オットコ前な
「なにがぁ」と間延びした生返事でマスカラの色直しへ余念がないのが、褐色ギャルの
「纒子だよ。昼飯時にあいつなにやったと思う? いつもの裁縫箱におにぎり詰め込んだんだぞ?」
「ダイエット?」
「どんなだよ。中には米粒ひとつ残ってなかったしよ」
「パスポート?」
「テレポートで海外旅行するならな」
「変って言えばさぁ」と宵子、色直しも済んで生返事をやめる。
「纒子、学校中の自販機を睨み回ってたんだってぇ」
「どうしちまったんだ、あいつ」
くだんの纒子は自分の席で、ブリキの裁縫箱をジッと睨んでいる。
「直接聞けばいいよぉ」と宵子、立ち上がる。
「おい、待てよ」と朝夏が止める暇もなく。のんびりしているようで動き出せば弾丸。それが宵子、纒子の友人B。
「纒子、カラオケ。リンパの完コピ、付き合って」
「マッサージ?」
「ちがう、リンキン・パーク」
その上、熱心な洋楽ロックの愛好家。
「ごめん、今日はパス」
「今日はじゃねえだろ。昨日もそのまた昨日もだ。付き合い悪いぜ」
「メンドイ用事があんの。落ち着いたら、なんでも付き合うからさ」
纒子は裁縫箱を抱えて、逃げ出すように教室を飛び出す。
「あう」とめげる宵子。
「……振られたな」
「なら、尾ける」
思い立った瞬間以外は凶日とばかりの勢いで、宵子は再起する。
「その行動力、色恋に向いた時が今から怖いよ」
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