第15話 恥ずかしさを吹き飛ばす優しさ

 俺とクルーシアはカタルの肩の上に乗り、ゾルビン村に移動していた。案外しっかりとした道があり、丁寧に整えられていた。小鳥が鳴き、心地のいい風が吹き、道沿いに生えてる木には、たくさんの木の実がなっていた。どうやらこっち側はクラーク村よりだいぶ栄えてそうだ。


 「ねぇ、錦木。」


 クルーシアが突然話しかけてきた。


 「ん?どうした?」

 「錦木はこの国の王になる気はあるの?」


 そう言われて気づいたけど、王になりたいとかは全く考えてなかったな。この世界に来る前はこき使われる立場だったし。実家にいた時も、職場にいた時も。でも自分の気持ちに任せて流れていってここまで来て、人を引っ張る立場になった。正直、結構ワクワクしてる。でも、これは周囲の人とある程度の関係値があるからだ。王になったら、あまり関係ない人達まで引っ張っていかないといけなくなるし、誤解、僻みや嫉妬も生まれる。だからまぁ、そうだな…。


 「そこまでは考えてなかった。 …けど、俺を人として見てくれる人。面と向かって相手をしてくれる人。一緒にいて楽しいって思える人。その人達の特別な存在にはなりたい…かな。」


 やべ!!なんか浸っちゃってそれっぽい事言っちゃったよ、恥ずかしい! 絶対クルーシアとカタルに変に思われてる! 

 

 「…。」

 「…。」


 クルーシアとカタルが黙り込んだ。ほら!絶対「錦木カッコつけたぞ…。」って引かれてる!あぁあ、だめだ。昔から後悔しないようにその時思った事をちゃんと伝えるようにしてたのが裏目に出た! 


 「錦木。」


 クルーシアが、ふんわりとした笑顔で名前を呼んできた。


 「…ん?」

 「錦木はもう私達にとっての「王」だよ。立派な。」

 「ウホウホ! そうですよ。錦木さん。俺達を引っ張っていってください。」


 その言葉を聞き、さっきまでの恥ずかしさはシャボン玉のように消えていった。この二人、人の心情を読めるのか? …そういえば、愛を込められて育ったペットって、飼い主が泣いたり、虚ろげな表情をしてると、近づいてきてそばを離れず、ぺろぺろ舐めたりして元気付けたりしてくれるんだったな。


 「本当に? それは嬉しい。本当に嬉しい。ありがとう!」


 俺、この二人が死んだら生きていけないかもしれん。これは今日の夜はカップラーメンパーティだな。


 ----数十分後


 ゾルビン村付近にある、大きな草原についた。 だんだんと空が暗くなってきた。今日はここで休むとして、明日の朝ゾルビン村に向かうことにした。


 「お疲れ様、カタル。」


 クルーシアが村から持ってきたグルミの木の実でジュースを作り、カタルに渡していた。クルーシアって優しいな。よし、俺はここらでカップラーメンに入れるお湯の準備でも…





【残りのカップラーメン数】 326個





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 読んでくださり、ありがとうございます。感想、評価をしてくださるととても有難いです。皆様の評価をもとに、作品をよりよくしていきます! まだまだペーペーですが、よろしくお願いしますm(_ _)m

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