第24話 巨星、墜つ
男体山の空では噴火によって大量の火山灰や土石が降り注ぎ、ロクは進行を妨害されていた。
その間にも家康は超再生を続けている。
神風、ならぬ神噴火である。
これが持っている男、元天下人というわけか。
「なんで今、このタイミングで……」
あたしはそれこそ噴火のように憤る。
しかし思い当たる節はひとつある。
「先ほど金脈を引き出したせいね」
黒乙女もあたしと同じことを考えていたようだ。
ロクが金脈を動かしたせいで地層に影響が出て噴火の引き金を引いてしまったのだ。
だが今更わかったところで後の祭りだ。
あたしはグラつく地面で必死にバランスを取りながらヘルメットに詰めた赤い花蕾を抱きかかえる。
ロクはそんなあたしを見下ろしながら問う。
「大丈夫か!」
「ロクさん、あたしたちのことはいいから行って!」
あたしがそう言うと、一瞬逡巡したがロクは頷く。
あらためて天空の殿上人を見据えた。
「おう!」
ロクは超人的な反射神経を発揮して赤く熱せられた岩を空中でうまくかわす。
家康めがけて飛行した。
家康に肉薄したところでこれまた大きな噴火が起こる。噴出物によってロクの行く手が阻まれる。火山灰によって視界不良に陥った。
どこまで世界は家康に見方をするのか。
強運ではなく豪運である。
「がはは! やはり天はわしに味方しておるようじゃな!」
「畜生!」
ロクは急停止してホバリングした。
火山灰によって家康を見失ってしまう。
マグマをまとった岩を空中でかわすことしかできない。
しかし、そこでロクにツキが回ってくる。
噴火によって銀色に輝く物体がロクの元に飛んできた。
それは男体山の頂上に突き刺さっていた――奥宮の大剣である。
長さ3メートル幅20センチの業物がなんとピンポイントで飛んできたのだ。
それはまさしく暁光だった。
刀身は噴火の熱に反応して赤く輝いていた。空中で大車輪のように回転しながら空気に触れるとやがて炎をまとう。
真っ赤に熱せられた刀剣をロクは黄金の手で掴む。するとその炎はロクの全身へと燃え広がっていった。和柄シャツに燃え移り、背中の翼は烈火のごとく燃え盛る。
ロクは精神を集中したのち、その奥宮の大剣を横一文字に薙いだ。
すると火山灰は一刀両断され、その狭間に再生途中の家康が見えた。
「なぬっ?」
目を丸める家康めがけて、ロクは黄金の翼を羽ばたかせると一直線に飛行する。
そして燃え盛る奥宮の大剣を突き出した。
「おまえの天下は終わりだ! 徳川家康!」
刀剣の切っ先が家康の心臓を深々と貫いた。
卵形のコアがグシャッと割れる。中から血潮があふれ出した。刀剣の炎によって徳川の血は赤黒く蒸発する。その赤黒い蒸気は不気味にもドクロを形作っていた。
しかし、これで完全にトドメを刺した。
「地獄で会おうぜ、徳川の旦那」
家康の耳元でロクが囁くと、家康は柔和に笑む。
「敵ながら
そうして白熱した激闘を制したロクは灰とともに自由落下していった。
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