第45話「穏やかで甘い日々」
#第45話「穏やかで甘い日々」
タイムリープを繰り返す人生の中で、久しぶりに穏やかで甘い日々が訪れた。
2回目のタイムリープの時には水川と同じように甘い日々を送ったがあの時は違和感や不安があった。やはり隠し事をしているという負い目もあったからだろう。
でも今回は違和感も不安もない。
霧島先生──いや、霧島さんと言った方がいいのだろうか?
彼女の存在が、俺の毎日を驚くほど心地よく彩ってくれている。タイムリープという重たい秘密を共有できる相手がいるだけで、こんなにも心が軽くなるものなのかと驚いた。
彼女は十歳以上も年上だけどそれを気にする様子もなければ、俺も全く気にしていなかった。
むしろ、その落ち着きと包容力に何度も助けられてきた。霧島先生は本当に綺麗で、賢くて、どこかミステリアスで……俺の中でどんどん大きな存在になっていった。
高校生活の中で、俺たちは時折二人で食事に出かけたり、こっそり旅行に出たりもした。もちろん誰にもバレないように。
それでも、その時間はかけがえのない思い出だ。教師と生徒──そんな肩書きはこの世界の建前に過ぎない。俺たちは、心から信頼し合える関係を築いていたつもりだ。
ある日、俺は思い切って彼女にキスを求めた。
「……いいわよ。キスくらいなら」
と彼女は少し照れながらも応じてくれた。
それだけで俺は天にも昇るような気分だった。
そして自分から求めててキスしたのに……逆に大人のキスで翻弄され蹂躙されたのは俺の方だった。キスだけで頭がくらくらした。
当然、若い俺はその先にも進みたくもなった。
ただし彼女はキスの後できっぱりと言った。
「前にも言ったけど性行為は駄目よ。私の倫理観では未成年とそういう関係になるのはダメなの。もしあなたがしたいならば……それはあなたが20歳になるまで待ってくれる?」
あと約4年待てってことか。まぁ、いい。いくらでも待つさ。だって、無理に行為に及んでこの関係を壊したくない。
ムラムラする気持ちもあったが我慢した。これはもう当面は自分で処理するしかないだろう。
そうして、日々は穏やかに過ぎていった。霧島先生と過ごす時間は、俺にとって初めて「幸せ」と言えるものだった。
これまでのタイムリープでは、常に不安、戦い、疑い、誰かに復讐することばかり考えていた。でも、今回は違う。
楽しい。生きていて良かった。そう思える毎日だった。
そのまま3年が経ち、高校を卒業した俺は彼女の影響もあって、大学へ進学することを決めた。高校教師を目指すことにしたのだ。
俺は次のタイムリープがあるかもしれない。その時には霧島先生にならってタイムリープしている人を探すべく高校の先生になるだろう。今回も高校の先生を体験しておくことで無理なく進んでいけるはずだ。
そして彼女と同じ道を歩んでみたいとも思った。彼女と同じ道を歩むことで、何か意味があるのではないか。俺も誰かの支えになれるような存在になれるかもしれない。そう思えるようになっていた。
そして──大学2年生になった俺は、ついに20歳を迎えた。
彼女との約束の歳だ。
「これでようやく、あなたも大人の仲間入りね」と、霧島先生は少し笑った。
俺は、静かに彼女の手を取った。
「霧島先生……もう“先生”じゃないよな?」
「うん、ただの“霧島”でもいいわよ」
二人で笑い合った。未来がどうなるかなんて分からない。でも、こんな風に笑い合える日々が続くなら、それだけでいいと思えた。
今回のタイムリープは、きっと──きっと、終わってもいいって思えるほど幸せなものになる。そんな予感が、確かに胸の奥に芽生えていた。
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