第38話 魔族発見

 さて、魔王国国境での前線基地でも盛大な見送りを受けて、いよいよ魔王国へと赴いた。

 魔王国側も荒野続きで、時折襲ってくる魔物は討伐をしつつ、魔王国を奥ヘ奥へと進んでいった。

 ファンライズと魔王国との国境線は、そこそこ広いので俺の進行方向だけを討伐したところで焼け石に水ではあるが、やらないよりはマシだろう。


 俺とクロが結構な速度の身体強化で2週間ほど走り続けていると、やっと魔族らしき人物を見かけた。


 5人ほどのグループだが、見た目はほとんど、この世界で出会った人間と同じようで、耳が少し尖っているが、それ以外に大きな違いは見られない。


 ただ、服装が和装なのは気になる。

 小袖に袴の格好を見ていると、俺は異世界転移じゃなくて日本でタイムスリップをしたのではと勘違いしそうになるくらいには、妙に様になった着こなしをしている。


 そして、もう一つ気になるのが、彼らの身体に内包している魔力である。

 この世界で今まで会ってきた誰よりも強力な魔力を持っている。


『大丈夫にゃ。

 それでもワタルの方が既に大きな魔力を持っているにゃ。

 まぁ、吾輩はさらに上をいくがにゃ。』


 クロからフォローなのか、自慢なのか脳内に伝わってきた。


 ちょうど魔物と対峙しているようで、狼型の魔物に魔術を使って攻撃をしている。

 不思議なのは、あれだけの魔力を内包しているの魔族(仮)なのに、使っている魔術の威力がだいぶ抑えられている。

 あの威力だと討伐するのは難しく、せいぜい追い払うのが関の山だろう。


 そうこうしているうちに、魔物は諦めたのか退散をしていったのだが、一匹だけ俺の方へ迫って来た。


 俺はサクッと風魔術で首をはねて討伐をしたのだが、魔族(仮)がそんな俺を見て驚いたと思ったら、気まずそうな微妙な顔をしている。


 そんな中から1人がこちらに寄って来た。


「魔物をそちらへやってしまい申し訳なかったが、これをやったのは貴方でよろしいか?」


 俺が首チョンパした魔物を指さして声をかけて来た。


「あぁ、俺の風魔術でやったんだけど不味かったか?」


「あぁ、いや、うん。

 まぁ、大丈夫かと思うが、ちょっと私達に付いてきて貰ってよいだろうか?」


 特に断る理由もなかったので、付いていくことにした。


 魔物は魔族(仮)の1人が血の一滴も残さないように丁寧に袋詰めにして運んでいる。


 道中は全員が気まずそうな顔をしながら、簡単に名前だけの自己紹介はしたが、他は特に会話もなく歩みを進めた。

 正直、気まずい。


『まぁ、好きにすると良いにゃ。

 死にそうになったら助けるにゃ。』


 クロよ。それは丸投げというのでは。


 歩いて10分ほどのところに1軒の建物があり、そこに全員で入っていきある部屋に通された。

 うん、まんま刑事ドラマにある取調室のようでテーブルがおいてあって、対面に椅子が置かれている。

 正直、和装をしているとこから畳張りの和室か、もしくは時代劇で罪人を裁くお白州みたいにゴザにでも座らされるかもって思っていました。

 

 俺が逃げ出さないようにと考えてか扉から奥の席に案内をされたので、そこに座ると早速尋問が開始されるようだ。


 尋問をするのはさっき話しかけて来た魔族(仮)だ。


「さて、先ずは確認をしておきたいのだが、この地域は我が国内でもっとも辺境の位置しているのだが、ワタル殿は一体何処から来たのだ?」


「ファンライズって人間の国から来たけど、ここは魔王国で良いんだよな。」


 俺が異世界から召喚をされた勇者だってのは流石に黙っておいた。


「あぁ、ここは偉大なる魔王陛下が治める地で魔族の国、魔王国だ。

 我々はこの辺境の荒野から魔物が魔族の生活圏内に入って来ないようにしている兵士である。

 しかし、あの荒野の先に人間の国があると聞いたことはあるが、事実だったとは。

 それでは、我が国の方針も知らないはずか。」


「方針って一体何のことです?」


「我が国では魔物を極力殺さない方針が今取られていてな。

 魔王陛下のご意見ってわけではないのだが、魔王国内で魔物は魔族と同じく魔石を持つ生物なのだから殺すべからずという声が広がっている。

 俺達の様な辺境で魔物と直接対峙する兵士達は反対しているのだが、魔王陛下は中立公平な方で、その様な意見が多くあるならばと今は魔物を極力殺さない方針なのだ。」


 まるで地球で特定の海洋生物を殺すなって叫んでいる環境保護団体みたいだな。

 異世界でも似たような連中がいるのかよ。


「じゃあ、俺がさっきの魔物を殺したのも不味かったですか?」


「いや、極力ということで自らの命を守る為ならば問題ないのし、そもそもワタル殿は我が国の国民ではなく知らなかったのだから大丈夫だろう。

 ただ、その騒いでいる連中が定期的にこの辺に出没して監視をしていてな。

 そいつらに絡まれるとめんどくさいことになると思っていたのだ。」


 なるほど、そこら辺も地球と一緒だな。

 だから、俺が魔物を殺したことで気まずそうにしていたわけだ。


 ただ、魔王国側からファンライズに魔物が来る理由は概ね分かってきたな。


 この魔族に殺されずに追い出された魔物がファンライズまで逃げてきた。

 一方のファンライズ側は魔王国から間断なく魔物が来るから、魔王国からの魔物を使った悪意のある攻撃かと考える人間が多くなったわけだ。

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