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「たぶん、過子さん。澤井の事……好き」
警察署に広がる重い空気の中、不意にみむろが口を開く。
「そんな……
「それ自体は恐らく冗談。でも貴史さんはその時、澤井さんの悪口言ってなかった?」
「あんな頼りない奴、とか大卒って言っても大した学校じゃないとか色々と」
「好きな人の事、馬鹿にされるの、許せない。殺したくなる事もある」
みむろは続けて、
「澤井さんの携帯電話を見て箕島さんと澤井さんの婚約を知りショックを受けた。それで箕島さんを罠に掛けようとしてメッセージで箕島を呼び、アリバイ工作をして罪を箕島さんに押しつけようとした。貴史さんへの怒り、箕島さんへの嫉妬どちらが先か分からない、多分運悪く、両方重って……、衝動的に」
みむろも年の近い少女を告発するのは辛そうだ、未だ見ぬ相手だとしても……。
「話は終わったかね」
取調室から箕島と共に久留島が出て来た。他の警察官から報告を受けると一つため息をつき、下を向いている久乃に話かける。
「話を
刑事課の上司なのだろう、奥のデスクから眼光の鋭い男が様子を伺っていた。久留島はやれやれと肩を竦める。
「所詮は子供騙しなんですよ。だから逆に初動で騙されました。体温だけで死亡推定時刻を偽造したところで、遺族の前では言い難いが、まあ、そのなんだ、遺体を解剖して胃の中を調べれば飲みたての睡眠薬が残っていたり、血液中のアルコール濃度を調べてみれば、事件が起こったのは食後すぐだと分かる」
ここで久留島は久乃の正面にしゃがみ込み、久乃の眼を見る。
「……久乃さん。今は幸い高校は夏休みだ。学校にマスコミが詰めかけることもない。事件が事件なので迂闊な事は言えんが、過子さんの今後の事を考えて任意の呼び出しに応じてくれないか……」
久留島も子供を持つ父である。久乃の悲しみと
鼎とみむろは心配そうに久乃を見下ろしている。解決の糸口を警察に提示した二人だが、いたたまれない。警察署に沈黙が広がる。当直主任らしき男も様子を見に階段を登って来た。
「……………………分かりました」
久乃は
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