下剋上オーバーナイト
アメカワスミオ
第1話 いきなり絶体絶命
「箕島健司さんだね。6月18日の事件について話を聞きたい」
「何だ?オメェら?飯食ってる最中に話しかけんな」
俺達を睨みつけるその目を受け流し、警察手帳を提示する。ペアを組んでいる高橋がさらに続ける。
「事件が起こった20時頃、あなたはどこにいましたか?」
ビールと餃子で一杯やっている簑島の様子をじっと観察する。一週間前、繁華街の飲み屋が集う路地で半グレの吉本が刺された。吉本は一命を取り留めた為、本人の証言から犯人はすぐに割れた。
簑島はその日、半グレグループのみかじめ代の集金日だということを知っていたのだ。そして集金した金と吉田が所持していた覚せい剤、護身の為に持っていた拳銃を奪った。
吉田は搬送された病院での事情聴取で警察には覚せい剤と拳銃を奪われたことを言わなかった。それが後の悲劇に繋がる。
簑島は高橋の質問に一瞬躊躇すると、顔色を変え手元のビール瓶を振り上げた。俺と高橋はそれを避けようとして入口までのルートを空けてしまった。簑島が店を飛び出す。
「高橋っ、追うぞっ」俺と高橋は逃げる簑島を追いかけた。
必死なんだろう、アルコールが入っている割に速い。簑島が路地に逃げ込む。俺達も路地に飛び込んだ。
5m先で簑島が背中を向けて止まっている。その先はまさかの行き止まり。「簑島、ゆっくりこっちを向け」簑島がこちらを振り返る。
奴の手を見た瞬間、俺は叫んだ。「高橋、逃げろっ」
簑島の手には拳銃が握られていた。その目は血走って歯を食いしばっている。ゆっくり拳銃がこちらに向かって持ち上がる。
(吉田の野郎、拳銃も一緒にパクられたこと内緒にしてやがったな・・・。)絶体絶命だった。
「青砥先輩っ」「いいから高橋、応援呼んでこいっ」高橋を逃がすために前に出る。するとその動きにに釣られた様に簑島が発砲した。
パンッ 思ったより軽い音がして腹に衝撃が起こる。痛みは感じない。膝の力が抜ける。
そのままアスファルトにうつ伏せで横たわると目の前が暗くなっていく。最後に俺の脳裏に浮かんだのは、すでに亡くなっている、昔好きだった幼馴染の顔だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます