第2話 地星師




 地星師ちせいし

 地の煌めく場所。

 即ち、植物や動物を育てたり、建物を建てたりするのに最適な場所を見つけられる能力を持つ者たちを指す名称。


 もえは金のなる木を育てるのに最適な場所を見つける事ができる地星師ではあったものの、同時にその能力を発揮させる事ができない能力もまた身に着けていた。

 触れてしまえばなのか、見てしまえばなのか、意識してしまえばなのか。

 発動条件は不明。

 金のなる木を枯らしてしまうというその呪われた能力は。




『もう、私たちはおしまいだ。一緒に死のう』




 両親は金のなる木の強い信奉者であった。

 金のなる木に多くの金をならせるか否かでその人の存在価値のあるなしを決めつける宗教団体に所属していたのである。

 萌は生まれた時に、地星師の能力も金のなる木を枯らす能力も顕現したわけではなかった。

 十歳の時に突如として顕現したのである。地星師の能力を。両親は喜び勇んで宗教団体の長に萌を推し出し、その能力を認められた萌は両親ともども高い地位を得る事ができたのだが、次いで十一歳の時に金のなる木を枯らす能力が顕現。長は元より他の信奉者たちから責め立てられた両親は萌と共に命を絶ったのであったが、何故か萌だけが生き残ったのであった。






 萌が目を覚ました時には、両親が自殺を図った時から二年もの月日が流れていて、見覚えのない真っ白い空間の真っ白い寝台に寝かされていて。

 そして、ぜんに万全の状態に回復したならボクと一緒に旅をしてもらうと宣言されたのである。


『オマエが金のなる木を育てるのに最適な場所を見つける事ができる地星師で、同時に金のなる木を枯らしてしまうという呪われた能力を持っている事も知っている。安心しろ。ボクの金のなる木はオマエ如きに枯らせるものじゃない。なんせ、ボクの金のなる木だからな。ボクの。だから、ボクと一緒に来て、地星師の能力をじゃんじゃん使って、ボクの百本の金のなる木にじゃんじゃん金をならせるんだ。いいな。拒否できないからな。なんせボクはオマエの命の恩人だからな。エッヘンヨキニハカラエ』




(バカ王子の宣言通り、バカ王子の金のなる木はバカなようで、私の能力は通用せず、枯れる事はありませんでした。よかったです。本当に。私はじゃんじゃんこのバカ王子から金を巻き上げて。そして、)




 あのにっくき宗教団体をぶっ潰すのですから。











(2025.6.3)



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