地星師は金雀児の下で眠りに就く

藤泉都理

第一章 四季編

第1話 金雀児国




 『金雀児国えにしだこく』。

 金至上主義のこの国では、この国の国民になった時に一本の木が贈られる。

 金のなる木である。

 文字通り、金がなる木である。

 この金のなる木の金だけを頼りに生活をする国民も居れば、この金のなる木の金を元手に商いを営んで生活をする国民も居た。


「ボクは商いを営むなんて絶対に嫌だね」


 金色の髪の毛を七三分けにして、常に瞼を半分だけ上げる半目の状態を保ち、口元をいやらしく上げ続ける小柄の少年、通称バカ王子ことぜんは、しっしっしっと笑った。


「金のなる木に金がなるかならないかは運次第。いいや、やっぱり努力を欠かさない人間にしか金のなる木に金はならないだなんて言っているやつも居るが、違うね。金のなる木に金をならせる為には、いい土地が必要なんだ」




『いいか。然。おまえには百本の金のなる木を贈る。おまえはこれより城を出て、莫大な金を得てもらう。この百本の金のなる木に莫大な金をならすか、もしくは、この金のなる木になる金を元手に商いをして莫大な金を稼ぐか。何でもよい。私が『金雀児国』の建国する際にかかった金額よりも稼げたら、約束通り、王位継承権を棄てて王子を辞めてよい。自由に生きよ』




「王子なんて、国王なんて面倒臭い仕事は絶対にやらないね」


 『金雀児国』の建国者であり現国王であり然の父親でもあるしんの言葉を思い出しては、然は意気揚々と城を背に歩き出した。




 隣国の『金鳳花国きんぽうげこく』の一金貸し屋でしかなかった辰は、この金のなる木を見つけ出しては莫大な金をならし、『金鳳花国』から土地と国王を名乗る権利を購入し、『金雀児国』を建国。『金雀児国』の国民になれば金のなる木を贈ると触れ回っては、『金鳳花国』のみならず他の国からも多数の民を引き寄せて、今の『金雀児国』を創り出したのであった。

 即ち、金のなる木に依存する国民と金のなる木に依存しない国民という、両極端の存在が居る『金雀児国』を。




「いいか。地星師ちせいし。ボクの全財産を渡すんだからな。ちゃんと金のなる木が莫大な金をならす土地を見つけろよ」


 然は深緑色のマントで口元以外を隠す、地星師である一人の少女、もえに釘を刺した。


「はい。然様。お任せください」


 萌は小さくお辞儀をしては、然の速度に合わせて歩き続けるのであった。


(さあって。このバカ王子からじゃんじゃん金を巻き上げましょうか作戦の開始ですね)











(2025.6.2)



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