ギャルは部活動紹介で奮闘する1
四月七日は、入学式とオリエンテーションのみで終わる。午後は天音とギターの練習ができるなと思いながら、俺はクラス分けが張り出されている玄関側の掲示板へと向かった。
掲示板の前で、俺は自分の名前を探した。俺は二年五組か。
天音は何組になったんだろうと思っていると、大きな声が聞こえる。
「あ、いたいた、池本―!」
振り返ると、遠くに天音の姿があった。天音は、ニカっと笑ってこちらに駆けて来る。
「おはよー、池本! ねえ、池本は何組だった?」
「おはよう。……俺は五組」
「そっかー」
天音は、掲示板を見て自分の名前を探す。やがて、パアッと明るい顔になって俺を見つめた。
「ねえ、あったよ、私の名前! 私も五組! 今年もよろしくね!」
「『今年』じゃなくて『今年度』だろ」
そう言いながらも、俺は何故か安心していた。どうして安心するんだ。こいつに情が湧いているのか?
「おはよおー、瑠羽―」
明るい女子の声がする。こちらに向かって来るのは、ライトブラウンの髪をツインテールにした小柄な女子。
「おはよー、
天音が、明るい笑顔で挨拶を返す。ツインテールは、俺の方を見ると話し掛けてきた。
「あー、もしかして、池本君? 私、
「ああ……話には聞いてる。天音とは同じ中学だったって」
一年の時、大道とはクラスが違ったが、何度も天音から話を聞いていた。もしかして、大道も天音から俺の話を聞いているのか?
「ねえ、瑠羽。何組だった?」
「私は五組」
「やったあ、同じクラス!」
そんな会話をする天音と大道を見ていると、また声が聞こえる。
「よー、直哉。何組だった?」
昴だった。俺が五組だと答えると、昴は「あちゃー」というように額に手を当てる。
「また直哉と違うクラスかよー。俺、二組だぜ? まあいいや、また喫茶店に来てくれよな」
俺の側にいた天音や大道と自己紹介をし合うと、昴は二組の教室に向かった。
俺、天音、大道も五組の教室に向かう。廊下を歩きながら、大道が俺に話し掛けてきた。
「池本君、ありがとねえ。瑠羽から話を聞いたけど、ギターの練習、付き合ってくれたんだってえ?」
「……天音のギターの腕前があまりにもあまりだったからな」
「えー、池本、酷くなーい?」
天音が、苦笑して俺の肩を叩く。女子の免疫がほぼ無い俺にスキンシップをするのはやめてほしい。
「……明日は、とうとう部活動紹介の日だね。新入部員、来るといいな……」
天音は、顔を上げながら呟いた。そんな天音の横顔を見て、俺は不覚にもドキリとしてしまった。
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