第7話、若き勇者たちの明暗【Others Side】
魔物との初めての実戦は、若き勇者たちに強い影響を与えました。
極端な例として、力に酔いしれる者と戦闘や殺害への強い忌避感を覚える者とに分かれます。
事前の訓練の過程では、以前とは比較にならない腕力や脚力、スピードと反射神経、ありとあらゆる身体能力が向上していることに対して、単純に面白がったり喜んだりしていた若者たちでした。
しかし魔物とはいえ殺害が前提となる戦闘を経験してからは、良きにしろ悪しきにしろ強烈な影響が表立って現れました。
一日の終わりには、自然と勇者たちは集まって、その日の出来事を話し合います。
知り得た情報の交換という名目でしたが、実際には単なる雑談がメインです。心細さを紛らわすためでもありました。
「あの魔物ってやつ、気持ち悪すぎるだろ。これからもずっと戦っていかなきゃいけないのかよ? 正直さ、怖すぎるぜ」
「俺もだ。剣で切り裂く感触がまだ手に残ってやがる。勘弁して欲しいな」
調子の良さそうな少年と優しそうな少年が弱音を吐く一方、強気な者もまた存在します。
「けっ、情けねえ。てめえら、それでもタマ付いてんのかよ」
「お前らそんなことよりよ、俺らのこの凄え力をなんとも思わねえのかよ。真っ二つだぜ、真っ二つ!」
元気の余っていそうな少年たちは、自らの戦果を誇るべく早くも武勇伝のように活躍を語ってみせます。
どちらも自然な感情で、性格によってどちらが強く表れるかの違いにすぎません。
もっとも、強い否定の感情を持った者は大変です。
「あたしはあんなの二度とゴメンよ。魔物は気持ち悪いし、なんであたしがこんなコトしなきゃいけないわけ?」
「わ、私も、む、無理……」
普段なら絶対に気が合わなそうな、ギャルっぽい女子高生と陰気な女子高生が意外にも同調していました。
「なんかさ、あたしら体良く利用されてない? どうも信用できないのよね」
こちらもまた自然な感情です。いくら強い力があったとしても、それを振るうことができるかどうかは別の話です。誰もが戦いに肯定的なわけではありません。
むしろ言葉に出して不満を表に出せるだけまだ精神状態は良いほうです。俯いて黙ったままの者もいるのですから。
「やりたくない人はやらなくても良いのではないかしら? 無理が祟れば良い結果には結びつかないわ。勇者の力があっても命がけなのですからね」
「力があるなら使うべきよ。この状況で我侭が許されるとでも?」
「その通りだ。ボクたちはボクたち自身のためにも、勇者の務めを果たすべきだ。そこに議論の余地などない」
お嬢様然とした女子高生が突き放すように言いながらも戦いたくない者を擁護すれば、すぐに真面目そうな委員長然とした女子高生と男子高生が反論します。
「あたしは嫌よ。戦いなんてメンドくさい。勇者の男はみんなガキっぽいし、どうせならいい男と一緒にいたいわ」
「私はもっとこの世界の研究をしたいです。魔物にも興味はありますが、戦いに明け暮れるのはご免被ります」
周りの空気をものともせず、ロリっぽい美少女が妙にませたこと言い出せば、研究者のようなことを言い出す身勝手な少女まで出始めました。
厳しい意見もありますし、自由すぎる意見もあります。良くも悪くも、若者らしいといえるかもしれません。
「休みが明けたらまた訓練だぞ? 今度は遠征に出るみたいだし、そんなことでどうするんだよ。やっていけないぞ」
「それって強制? 行きたくないな」
「うげ。遠征ってまた馬車で移動だろ? 魔物も嫌だけど、あれもキツイぜ」
若き勇者たちがどれほど優れた素質を持っていようとも、何事にもまだ不慣れな初心者です。
訓練に訓練を重ねて、やっと勇者らしい力を発揮できるようになります。肉体的にも精神的にも、彼らは未熟であるのですから。
彼らの無軌道な会話は遅くまで続けられました。
適当なグループを作ったり、割り込んだりしながら雑談をするものですから、話があちこちに飛んでまとまりがありません。
個人個人で意見が違うのは結構なことですが、実のある話になっているとはいえませんでした。
普段はまとめ役を自認している大学生の男も、初めての戦闘後ということもあり、浮ついた気持ちであることは否めません。
結局この日は、まとめ役の大学生も戸惑ったまま誰も話をまとめることなく、それぞれが思うままに語って一日が終わりました。
勇者の肩書と使命を与えられた若者たちでしたが、前途は多難です。
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