意外な評価
部屋に戻ってサッポロビールを楽しみながら、今夜は聞いてみた。千草のどこがそんなに良くて結婚してくれたんだって。
「頭のテッペンから足の爪先までこの世の最高の美を集めたようなもんやし、それより何より性格が天使みたいに綺麗やん。これ程の女が目の前に現れたら魂のすべてを吸い取られるに決まってるやんか」
ありがと。どれだけコータローが歪んでるのかよくわかるよ。それでもとくにって無かったの。
「どこを切り取っても最高しかあらへんのが千草やけど、あえて言うたらか」
うん、あえて言ったらだよ。
「それは答えにくいな。言わんとあかんか」
今夜は聞きたいの。千草のお願い。
「言いにくいな。頼むから怒らんといてや」
千草が頼んでるのよ。怒るものか。
「千草のヴァージン奪いやがった野郎がおるやんか。そいつは何分もった?」
おいおい、えらいこと聞くな。
「嫌やったら答えんでエエで」
初めてだったし、痛かったし、夢中だったし、緊張だってしてたから、何分と言われても正確には思い出せないけど、とにかく早かった気がする。感覚的にはズドンと入れられて、うわぁっと思ったらぶちまけれてたかな。
その辺は千草も初体験だったし、相手だって本当に愛していたのじゃなく、単なる罰ゲームでとにかくさっさと終わりたかったのもあったはずだけど。
「嫌な事を思い出せて悪かった。たぶんやけど三分もなかったんちゃうか」
どうだろ。長くて五分ぐらいだったかも。終わった時にもう終わりって思ったのを覚えてるぐらい。
「その最低のカスのグズ野郎はアホや。千草の価値が全然わかっとらへん。アホやから助かったようなもんやけど呆れるわ」
どういうこと。
「その最低野郎は五分も続くはずがあらへん。三分かって難しいと思うで。三擦り半でも不思議あらへん。三擦り半どころか入れたら暴発して終わっても不思議とは思わん」
はぁ、なんだよそれ。
「これも言いとうなかってんけど、オレな、どっちか言わんでも遅漏気味やねん」
遅漏って早漏の逆でなかなか炸裂しないってことよね。
「その辺はあれこれコントロール出来るようにはなっとるけど、相当頑張らんとあかんのはそうや」
そういうけど千草とやる時は、
「小天橋で千草を初めて抱かせてもうたやんか。そんで入れさせてもうたやん。あの時に魂消てもてん」
あの夜の事は千草も忘れられないけど、
「オレな、千草を喜ばせる自信だけはあったんよ。女を喜ばせるのはなんやかんや言うても時間やんか」
身も蓋もないけどそうなるよね。少なくとも短いとどうしようもないもの。
「あの時に千草をオレは絶対に昇天させる気やってん。それで千草を夢中にさせたかったからな」
それは無理あるよ。千草は歳こそ取ってるけど体自体はまだ二回目だ。それも十年さえ軽く超えるぐらいのブランクがあったもの。それなりに感じるってぐらいまではあったけど、あそこから昇天までとなると、
「千草が感じ始めてるのはわかったんよ。そこからは時間勝負みたいなもんやんか。そやけどオレの方がどうしようもあらへんかってん」
なんかわかりにくいな。
「オレは千草で男がホンマはどう頑張らなあかんか初めてわかったんよ。わからへんか。もう我慢できへん状態なっても、なんとか気を逸らして先に先に延ばす努力や」
えっと、えっと、
「千草に入れただけでリミッターを振り切りそうになってもたんや。あんなもん三擦り半どころやない。入れたらすぐに暴発みたいなもんや。いくらなんでも恥ずかしすぎるやんか。どれだけ必死に耐えたかわからんぐらいや。それでもあの夜はあれが限界やった。もうどうしようもあらへんかった」
それって、
「千草の中は極楽パラダイスやねん。そういう女もこの世にいるぐらいの噂は聞いとったが、オレに言わせたらそんなレベルやない。オレは千草と巡り合うために生まれて来たって確信したんや」
こればっかりは自分では確かめようがないな。そんなに良いの、
「エエなんてもんやない。夢の世界がそこにはあるねん。男冥利に尽きるってこれしかないやろ」
そうなんだ。そんなに喜んでくれてたんだ。千草だって喜ばせてもらってるけど、コータローもそうだったのは嬉しいな。夫婦の営みって、あれ以上はない密着状態で頑張るのだけど、お互いがどう感じてるのかの最後のところはわかんないのよ。
ある程度はわかるよ。相手の動きとか、表情とか、反応でね。男から見た女はそんな感じじゃないかな。でもさぁ、あれだって男を騙そうとすれば演技できるって言うじゃない、それっぽい反応をすれば見抜ける男は少ないって言うもの。千草がコータローとやる時は全部本気だけどね。
でもさぁ、女から男を見た時は難しい気がするな。この辺は経験人数で変わるのだろうけど、千草はこれ以上増やす気は毛頭ないからね。殺されたって許すもんか。でもそれだけじゃないのよね。
千草はコータローに体を変えられてしまってるじゃない。お蔭でひたすら感じまくってる。感じるだけじゃなく、すぐに昇り詰めようとしてしまう。いや、昇り切ってしまい天まで舞い上がる。で、舞い上がって戻って来てもまた昇る。
そうしてくれたのはコータローだし、そうなれたことに感謝しかないんだけど、そんな状態でコータローの様子を観察なんて出来るはずがないだろうが。せいぜいわかるのはコータローの炸裂の気配ぐらい。ついに来るってね。だって、だって、炸裂してもらえるのは妻であるそれこその特権だ。あの感覚も千草の女は教え込まれてる。
だからさ、千草を貫いてるコータローが、そんなに良く思ってくれてるって知って嬉しいなんてもんじゃない。こればっかりは、コータローにしかわかんないもの。
「そやったんか。千草は妻になってくれてるから当たり前やけど、千草以外は女に見えんもん。それで美人で、スタイル抜群で、性格も申し分なしやから、もう幸せなんて言葉じゃ表現できるもんやない」
なんかコータローの秘密をまた知った気がする。コータローだって男だから、思春期に入ってから女が欲しくなり、何人かの女を経験してる。だけど思いとは裏腹にそこまで満足したことが無かった気がする。
早漏も辛いだろうけど、遅漏気味なのも辛さがあったはず。遅漏気味だから女を喜ばせることは出来たかもしれないけど、コータロー自身はやっと炸裂させたって感じだったのかも。
まさかと思うけど、コータローも独身を覚悟してたのかもだ。そこまでは言い過ぎかもしれないけど、モロに言えば本当の意味で自分も満足できる女って、どんな女だろうがあったのかもしれない。だからあの歳まで独身のままだったとか。
まさのまさかみたいなものだけど、コータローは千草を知ることで、女と男の営みの本当の醍醐味を知ることが出来たのかもしれない。さすがは歪み切った男だけの事はある。千草にも誇れるところがあって良かったけど、それでもの最後の疑問が残ってしまうじゃない。
小天橋の夜に千草を知って一目散みたいに結婚したのは、この理由でなんとか理解できる。でもさぁ、ここでも二つ疑問が残っちゃうのよね。一つ目は未だに解けないどうして千草に惚れたのかだ。惚れなきゃ、抱けないものね。
もう一つは千草がそうじゃなかったらだ。他の女たち程度だったらコータローはどうしていたかだよ。やっぱり捨てられたんだろうな。そうされたってそんなに不満は無いよ。そうだな、たった二回だけど二人の男を経験できたぐらいの価値はある。コータローの話だったらあの夜に昇天させられてるから、それだって経験できたぐらい。
それはそれで寂しいけど、千草の女の価値なんてそれぐらいだと知ってるつもりだよ。それでも縋り付いて泣くかも。好きになってるものね。そこまで縋り付いたらコータローのことだから責任は取ってくれたかも。
コータローが千草の背中に回って来た。もう浴衣になってるから、いきなりダイレクトかよ。帯も解かれちゃった。
「うぅぅぅ」
千草が反応できるのはこれだけ。だって唇はバッチリ塞がれてるから。そして確認された。これは何回されても恥ずかしいよ。とっくになってるよ、千草だって欲しかったんだ。夫婦の時間が始まるよ。
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