第52話 学園祭終了

 「学園祭お疲れ様~。」

 「「「お疲れさまでした~」」」


 生徒会長の音頭を元に、皆で乾杯をしてコップに口をつける。勿論中身はジュースだ。学園祭が無事終わったことの祝いに、皆で打ち上げをしようと生徒会長が提案したのだ。私は3日中2日仕事をしていないし、初日も怒涛の展開だったので、遠慮しようと思ったが、生徒会長とシャーリーに連行されてしまった。乾杯が終わった後、端でちびちびとジュースを飲んでいる。

 そうは言っても生徒会のメンバーは多くないので、端にいると逆に目立つのだが。1人で飲んでいるとジネットが近寄ってきた。


「どうしたんだ?そんなに端っこにいて。何を気にしている?」

「だって、私今回殆ど何もしていませんでしたし・・・。」

「そんなこと気にするな。準備は率先して手伝っていたじゃないか。それに俺も大会とデートで殆ど手伝っていないしな。こういうのは参加したことに意義がある。」

「そのとーり!!」

「わ。カーラ先生。」


 驚いて声がしたほうを見ると、カーラ先生が横にいた。カーラ先生は楽しそうにアネットとジネットの肩を抱く。


「君達は準備をいっぱい手伝ってくれたじゃないか。それだけで充分だよ。」

「ですが・・・。」

「それにね。生徒会の当日の役割ってそんなにないんだ。貴族達が集まるから兵士達が国から派遣されるしね。何があってからでは遅いから。まあ今回はあったんだけど。」


 カーラ先生がアネットを見る。アネットは縮こまっていた。


「すみません。私のせいで・・・。」

「いやいや。君は被害者だろう。もっと堂々としていたまえよ。」

「それは・・・そうなんですけど。」

「それよりもだね・・・。君に前教えてもらった件なんだが・・・。もう少し聞きたい所があるのだが・・・。」

「あ・・・えーとはい。」

(アネット。替わるわ。)

(お願いします。)


 私はアネットと交替した。話す内容は、先日カーラ先生と2人で話した件だ。ゲーム知識の話なのでアネットは知らない。ジネットには離れてもらって、2人で話をする。カーラ先生は恋人ではないのだから正直放っておいてもいいのだが、どうせなら幸せになってほしい。それはアネットも同じはずだ。なので、手を貸そう。自暴自棄になってこちらに来られても困るというのが本音だが。


「ありがとう。色々動いてみるよ。」

「ええ。応援しています。」


 そう言い、カーラ先生とは別れた。この後すぐアネットに替わってもいいのだが・・・。


(アネット。もうちょっとだけ、表にでててもいい?)

(ええ。構いませんけど・・・。)


 今度は了承を貰った上で表にでたまま、移動する。移動先は生徒会長とシャーリー先輩の元だ。


「生徒会長。シャーリー先輩。」

「おお。セレナーデ君。楽しんでいるかい?」

「こんにちは。セレナーデさん。」


 学園祭初日の件があったのに2人共普通に話しかけてくれた。それが嬉しくもあるが、きちんと謝らなければいけない。私は頭を下げた。


「生徒会長。シャーリー先輩。学園祭初日はご迷惑をおかけしました。特にシャーリー先輩。先輩に対してあるまじき態度でした。お詫びします。」


 私の言葉に2人は顔を見合わせたが、2人共すぐに微笑んだ。


「なんだ。まだ気にしていたのかい。大丈夫。後輩のサポートも先輩の役目だ。」

「ですが・・・。」

「もう。ケイネスさん。言い方が雑過ぎます。大丈夫よ。セレナーデさん。むしろあの親子は貴方に感謝していたのですから。」

「感謝・・・ですか?」

「ええ。子供の方は、父親に泣かずに謝れたことを感謝していましたし。父親の方も自分の価値観を子供に押しつけてしまったと反省していました。そのことを気付かせてくれた貴方に感謝していましたよ。」

「そうですか・・・。」


 それを聞いてほっとした。過程はどうあれ、私の思いは伝わっていたのだ。だが、シャーリー先輩は満面の笑みでこちらに近づく。ちょっと怖い。


「と、は、い、え。これからは独自の考えで動くのは自重しましょうね。くれぐれも勝手に動かないように。」

「は・・・はい。」

(本当ですよ!!)


 シャーリー先輩に同調するようにアネットが中で頷いていた。イラっとしたので、私はその場でアネットに替わってやった。いきなり放り出されたアネットは慌てだす。当然目の前の2人は意味が分からず首をかしげていたが・・・。

 ともあれもう1度謝罪をして、アネットは2人から離れた。ジュースを飲んでいると、今度はランロットが近づいてきた。


「よお。楽しんでるか?」

「あ、ランロットさん。はい。楽しんでいます。」


 アネットはジネットの後にランロットを呼び出し、告白を断っていた。しかし彼は傷ついた様子は見せず、ジネットと同じように友人でいてくれと言ってきた。もちろんアネットは了承し、時間がある時は訓練に付き合う約束をした。


「ジネットのやつ。大会は負けたが、次は必ず勝つ。」

「はい。ランロットさんなら必ず勝てますよ。」

「他人事みたいにいうなよ。訓練、付き合ってくれるんだろ。」

「は・・・はい。出来る限りですけど。」

「それより。俺達を振ったんだ。お前も好きな相手に頑張れよ。うまくいくように応援してるからな。」

「は、はい。頑張ります。」


 アネットは顔を赤くして頷いた。ランロットはそれを見て、満足した顔で頷くとアネットから離れていった。

 お酒を飲んでいる訳でもないので、どんちゃん騒ぎになることも無く、打ち上げは無事に終わった。後片付けを皆で行い、その場は早々に解散となったのだった。


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