第42話 学園祭

「そんなわけで学園祭が近づいています。」


 告白騒動から1ヵ月がすぎた。放課後いつも通りに生徒会室に集まると、カーラ先生がいきなり私達に告げた。隣で生徒会長が呆れている。


「先生。いきなり言っても意味がわかりませんよ。もう少し詳しく説明しましょう。」

「ああ。申し訳ない。もう少し詳しく説明しよう。」


 そう言ってカーラ先生は説明を始めた。

 学園祭とはその名の通り、年に1回学園で行われるお祭りである。開催期間は3日間。といっても日本の学校みたいに屋台をだしたりはしない。部活動に入っている人達が成果を発表したり、剣術大会や魔法大会が行われるのだ。来客も学園の親族と王族関係者だけ。閉じられた祭りなのだ。


「生徒会は学園祭の準備をいつも手伝っていてね。だから見回りは一旦ストップして文化祭の準備に専念する。」

「具体的には何をするんですか?」

「主に先生達の補佐だね。私の指示の下、準備を手伝ってもらう。特に大会には国王も見に来られるからね。下手な事が起きないように準備を万全にしなければいけないんだ。」


 国王が見に来られるとなると大変だ。万が一学園祭で国王が怪我をしようものなら、言葉通り先生達の首が物理的に飛びかねない。生徒会メンバーも息をのんだ。


「とは言ってもそんなに気合を入れすぎなくてもいいよ。毎年行われているものだし、先生達も慣れている。今から取りかかれば準備は十分間に合うはずだ。」

「そういうこと。なのでカーラ先生の指示の下、君達には準備の手伝いをしてもらう。いいね?」

「「「はい!!」」」


 全員が声を揃える。生徒会長は嬉しそうに頷いた。

そこからは一気に忙しくなった。見回りがなくなったと思ったら、カーラ先生の指示の下、それぞれが各先生の下へ手伝いに行った。入館者のリストの作成。演目リストの作成。大会の受付準備など。特に大会は目玉らしく、準備に時間がかかった。

大会は剣術と魔法に分かれ、学年別に分かれて行われる。剣術は模擬武器を使った実践形式のトーナメントだが、魔法はランダムに動く標的に魔法を当てるというゲームみたいな形式だ。魔法は暴発の恐れもあるし、対戦にすると怪我をする可能性もあるから仕方ない。その分的の準備等、剣術大会よりも準備に時間がかかる。

大会への参加は生徒会メンバーであってもできるので、生徒会からはランロットが出場する予定だ。ランロットから優勝するために力を貸してほしいと依頼され、空き時間にアネットが魔法を教えることになった。ジネットはランロットとアネットが2人きりなのが納得いかなかったのか、大会に出ないのに練習時間に現れてはランロットと一緒に練習していた。しかし2人で競って練習するのが相乗効果になっているのか、ランロットやジネットの魔法はどんどん上達していった。


「そういえば、アネット嬢は魔法の大会に出ないのか?アネット嬢なら優勝できる実力があると思うが・・・。」

「確かに・・・。開始後、即全ての的を破壊できそうだ。」

「私は大会とかに興味は無いので・・・。あまり目立ちたくないですし。」

「う~む。残念だ。師弟対決をやってみたかったのだが・・・。」


師弟対決ができないことにランロットは悔しがっていたが、アネットは固辞し続けていた。まあ魔法大会にでたらかなり目立つだろう。魔力量は私が裏で魔力を取り込んでいるおかげで日に日に伸びている。

この国では、魔法使いのランクは使える魔法と魔力量で決定している。一番上がSSSランク。それからSS、Sランクと下がっていきA~Eランクとなる。SSSランクは世界で数人しかおらず、Aランクでも魔力量としては十分だ。アネットの父セレナーデ侯爵もSランクの魔法使いだ。

アネットは魔力量だけでいうのなら、現時点でAランクに届きうる。このまま訓練を続ければ卒業までにSSランクになれるだろう。その上自身の魔力だけでなく、魔力眼のおかげで世界に漂っている魔力も使えるのだから、使える魔力量はこの国だけなら上から数えた方が早いだろう。魔法制御も、眠った後訓練しているおかげで、日々成長している。今ではアネットも水の剣を40~50本一度に生成することができる。おそらく最上級生の大会に出ても優勝できるだろう。

だが大会で一番気を付けなければいけないのは怪我だ。基本は誰かが怪我をすることは無いが、万が一誰かが誤って大怪我をしたらアネットは治そうとするだろう。それだけは避けなければいけない。大勢の中で回復魔法の使用を見られたら目立つことこの上ない。国がアネットを確保しようと動くだろう。今は国外逃亡など考えたくはない。

そんなわけで、アネットは私から大会当日の運営には一切関わらないようにと厳命されているため、学園祭当日は見回り担当になっている。


「まあ、でないのならばしょうがない。その代わり俺が優勝できるように特訓してくれ!!」

「私にできる限りですが・・・。」

「おいランロット。あまりアネット嬢に近づくな。」

「なんだよ。お前も大会には出ないんだろ!!なら邪魔するな!!」

「大会に出るつもりはなかったが、お前を倒すために出る。だから俺にも教えてくれ。」

「は・・・はい。」

「いいだろう!!叩き潰してくれる!!」


そんな風に2人は言い争っていた。アネットはそれを見て苦笑する。言い争っていても2人は本気で喧嘩はしていない。ライバルといった感じだ。アネットに関して取り合っているが。アネットがどちらかを選んでも2人の仲に亀裂が入ることはなさそうな気がした。


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