4章 学園祭

第40話 告白の後

 ジネット達の告白から数日が経過した。皆がいるところで告白したのもあるだろう。アネットへの告白はあっという間に皆に広まり、アネットは話題の人となった。学年が違う生徒会長までもが知っており、アネットの事をからかってきた。


「ローレル君と見回りの後、抜け出してもいいよ~。後は若い2人で楽しんでくれても。ああ。ただし節度あるお付き合いをしてね。」

「いいんですか?」

「行きません!!ジネットさんも真剣に取らないでください!!会長も!!別に付き合っていませんから!!」

「そうだぞ!!俺だって告白したんだからな!!」

「2人の男を手玉に取るか・・・。悪女の素質があるな。」

 (3人だけどね。)

「悪女になんかなりません!!」


 アネットの叫び声が響く生徒会は今日も平和だ。だが意外だったのは、ランロットが思った以上にアネットに本気だったことだ。彼は生徒会長に、放課後に行う見回りのペアをアネットにしてほしいと直談判した。今のままではアプローチが全然できないからと。当然ジネットが受け入れるはずもなく2人は揉めた。生徒会長が仲裁に入り、話し合った結果、ジネットとランロットは交代でアネットとペアになることになった。他の生徒会メンバーから暖かい視線をうけ、アネットは恥ずかしそうだった。

 そんな噂話が同じクラスメイトに伝わらないわけもなく、アネットは告白の数日後、友人2人に喫茶店に連行された。


「さあ、アネットさん。白状しなさい。」

「証拠はあがっているよ~。」

「フェラールさん、ミランジェさん。落ち着いて・・・。」

「前気になる殿方ができたとおっしゃっていたと思ったら、まさかの2人からの告白!!」

「3人の男性の中で揺れる女。その名はアネット・セレナーデ!!」

「やめてください・・・。お願いですから。」


 はやしたてる2人はとても楽しそうだ。それに対しアネットは顔を赤くして恥ずかしそうにしている。やはり女性は恋バナが好きなんだなあと私はのんびりと3人の話を聞く。


「それで誰が本命なんですの?こっそり教えてくださいな。」

「誰という訳でも・・・。皆良いかたですし・・・。」

「まさか3人をはべらすの!?」

「そんなことはしません!!」


 アネットは大慌てで否定する。だが、2人は興味津々のようで目を輝かせていた。アネットはそれを見てため息をつく。


「むしろ助けて下さいよ・・・。本当に困っているんです。こんなに好意を持たれた事なんてなくて。辛くて。」

「なんで?むしろ嬉しい事じゃないの?」

「私なんかを好きになってもらうなんて、申し訳ないというか・・・。」

「アネットさん。」


 フェラールが唐突にアネットの頬を掴んで引っ張る。その顔は少し怒っているようだった。


「フェラールしゃん。痛いでしゅ。」

「痛くしているので当たり前です。いいですか。貴方は自己評価が低すぎます。もう少し、自分に自信を持ってください。私達は貴方が素敵な人だということを知っています。だから告白されても驚きはしません。ですけど、貴方が自分を貶めるということは、貴方に告白をした方達をも貶めているのですよ。」

「勿論私達の事もね。」

(私の事もね。)

「そんなつもりは・・・。」


 予想外の言葉にアネットはうろたえる。だがいい機会だ。彼女にはもう少し自分に自信を持ってもらうとしよう。フェラールはアネットの頬から手を離して微笑んだ。


「なら自信を持ってください。そしてゆっくりと考えてください。幸いお相手は待つと言ってくださっているのでしょう。それなら焦らすくらいでちょうどいいのです。しっかりと考えて後悔しない選択をして下さい。」

「私達は誰を選ぼうとも貴方を応援するしね。」

「フェラールさん、ミランジェさん・・・。ありがとうございます。」


 アネットの瞳に涙が浮かぶ。彼女は本当にいい友人を持った。彼女達なら、アネットがどんな選択肢を選ぼうとも応援してくれるだろう。本当に心強い。


(いい友人を持ったわね。アネット。)

(はい・・・。)


 2人の言葉でアネットは元気を取り戻し、フェラール、ミランジェに改めて状況や自分の想いを話した。2人共真剣に話を聞いてくれた。


「やはり、アネットさんが気になっているザクさんという方にもう1度お会いするのがいいのではないのでしょうか。その方を置いて他の2人から決めるのは違う気がします。」

「そうですよね・・・。私もザクにもう1度会いたいと思っています。」

「手がかりは無いの?」

「あることにはあるんですが・・・。出来れば使いたくないというか。自然に会いたいので・・・。」

(まあ、ザクの正体を教えなきゃいけないからね。)


 私は、ザクがどこにいるのか、どうすれば会えるのかを知っている。だが、それを教えるのをアネットは望まない。ザクから教えてほしいと思っているのだろう。私も無理して教える気はない。彼女の気持ちを尊重するつもりだ。


「であれば、やはり街にまた行ってみるしかないのでは?」

「今度3人で行く?会えたら私達はいなくなるから。」

「そうですね。日にちが合えばお願いします。父には話をしておきますので。」


 そうして街に行く日程などを話しているうちに、あっという間にお昼休みは終わり、3人は慌てて教室に戻ることになった。

 だが、2人と話せたことで大分気が楽になったのだろう。アネットは周囲の注目を気にせず、行動できるようになった。ジネットやランロットにも、しっかり考えて結論を出したいから少し待ってほしい旨を伝えた。2人は快く了承してくれた。


「告白した時にも言ったが、構わないよ。俺は待つから。ただアプローチはさせてもらうけどな。」

「俺も待つぞ!!ただ今度魔法の訓練には付き合ってくれよな!!」

「2人ともありがとうございます。よろしくお願いします。」


 そんなこんなで告白騒動は一旦落ち着いた。アネットに怒りを持つものを除いて・・・。


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