第10話 無礼者のためになど天才は動かないのだ!

「世名様!助けてください、お願いします!」


 昼休みが始まった直後、こんな声が教室に響き渡った。

 その声の宛先は当然私。そして差出人は墨田るい……


「いや、デジャブ!」


 今日も今日とてうるさいな!東雲秀のことはとりあえず無視する。

 天才は基本的に他者の相談事など聞かない。だが、(以下略)

 少し話を聞くぐらいはしてやろうじゃないか!


「なんだ?少しだけなら聞いてやろう」

「ありがとうございます!あの、再来週に中間テストがありますよね。その、私の友達がテスト不安みたいで……。世名様に教えてもらいたいんです!」


 なるほど、墨田るいではなく友達を助けてほしいと……


「ならば、その友達とやらが頼みに来るのが筋ってもんじゃあないのか?」


 人を介して頼み事が通じると思っているなんてその友達とやらはなんて失礼なんだ!

 天才をなめすぎだ!これは、友達とやらもわからせる必要があるか……?


「そっそうですよね!すみません、友達にはまだ言ってなくて……。やる気はあると思うのですぐ連れてきます!」


 そう言って墨田るいは教室を出ていった。


「というか、なんで墨田は敬語なんだ?昨日までは普通にタメ口だったよな」

「何を言ってるんだい君は?彼女が敬語の理由……そんなもの、私の素晴らしさを理解したからに決まってるじゃないか!これまでは目を逸らしていたが、私に一般人が話しかけるなどおこがましいことであると気づいてしまい、せめてもの敬意の表現として敬語を使っているのだ!」


 昨日までは目を逸らしていたようだが昨日は私と一対一で話したのだ。是が非でも私の天才性について気づいてしまうだろうな!


 まぁ身の程をわきまえた凡人は嫌いじゃない。今日の相談とやらも態度次第では乗ってやらないことも……


「世名様!連れてきました!」

「あっ、昨日の……神谷世名ってお前だったんだな!次席ってほんとにすごいな、

さっきるいがめっちゃ褒めてたよ。勉強教えてくれるんだって?ホントにありがとな!」


 墨田るいが連れてきたのは、ムカつく面のイケメン……こいつ、明智蒼汰じゃねぇか!


「墨田るい、その男は……」

「蒼汰くんです!昨日友だちになりました!世名様のおかげです、本当にありがとうございます!」


 友達……明智蒼汰が友達に……

 こいつ、墨田るいのことを誑かしやがったな!


 はぁ、やはり墨田るいに明智蒼汰の相手はまだ早かったか。こいつは想像以上に人のことを誑かすのがうまかった。わからせようとして返り討ちにされるなんて……。


「やはりお前が明智蒼汰か!お前のようなやつを助けてやることなんて天地がひっくり返ってもありえねぇよ!」

「えっ?俺、神谷になんかしたっけ?ごめん忘れちゃって……」

「あぁ気にしないでいいよ。なんか勘違いしてるだけだから」

「っ、あぁ東雲か、久しぶり」

「あぁ昨日ぶり。……世名、たぶん明智も困ってるだろうし助けてやれよ。お前が思ってるほど悪いやつじゃないぞ」


 なんということだ、まさか東雲秀の籠絡まで済ませていたなんて。明智蒼汰、侮れない相手だ。


 ……どうする?このままだと被害が広がる可能性が高い。ここは私が早めに現実を分からせてクラスメイトを助けてやるべきか?


「……いいだろう、テスト勉強だったな。付き合ってやるよ!」

「あぁ、よろしくな!」


 私の長きに渡る戦いは今始まったのだった。

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