8.ドールハウス-1-
異世界と言えばテンプレで、冒険者となった者であれば一度は必ず通るであろうゴブリン討伐の依頼を受けたシェリアザードは、レオンハルトと共にゴブリンを見かけたというシャドーの森の奥へと向かう為の準備をしていた。
二人が準備していたものとは武器と防具、薪と毛布、鍋とケトルといった調理器具に食器とカップである。
そして───
「私に日本で売っている商品を取り寄せる能力・・・ネットショップや通販とかがあれば、こうして討伐や旅に出る時の食生活が豊かになるのだけど・・・」
アメシスティナ王国の料理は昭和の後半から平成レベルだが携帯食は余り発展していない。
(異世界というか日本で売っている商品を買う事が出来る能力が欲しかった・・・)
ワタガシと黒パンと干し肉をはじめとする食料に牛乳や調味料等の買い出しに市場へと出かけていたシェリアザードは、どうすれば旅に出ていても美味しい料理を食べる事が出来るだろうか?と考える。
『シェリアザードよ、屋敷に戻ってからそなたが作る料理は我のストレージに入れるがよい。それから──・・・』
「ストレージ?」
(ストレージって確か・・・アイテムとかを収納する魔法のようなもの、よね?)
確か異世界を扱った漫画や小説では、主人公かストレージという魔法を使って荷物やアイテムを収納していたはず。
(ワタガシであればストレージを使えても不思議ではないけど・・・何でそんなものが必要なの?)
修行していた時はトカゲ野郎を倒す事しか頭になかったシェリアザードは今になって再び思う。
〇リーザ様の技に加えて荷物やアイテムとかを収納する魔法を使えるようにして欲しいとお願いすれば良かった
・・・と。
「レオンハルト様、実は──・・・」
大量の食材を両手に抱え、王都・グロリオサにある屋敷に帰って来たシェリアザードはレオンハルトにある事を頼む。
「わ、分かりました・・・?」
ワタガシが何を考えているのか分からないが、シェリアザードは顔に疑問符を浮かべているレオンハルトに頼んでワタガシが言っていたものを用意して貰う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日
「木魔法って植物の生長を促したり、蔦等を操るというイメージしかなかったのですが・・・ああいう使い方もあったのですね」
驚きの色を含んだ声を上げるレオンハルトの目の前にあるのは、刃のように鋭く伸びた草で串刺しにされた何十体ものゴブリン───だったもの。
その中には上位種であるゴブリンナイトにゴブリンジェネラル、ゴブリンシャーマンにゴブリンキングが含まれている。
「そうですよ。レオンハルト様の実家でも騎士団でも植物を武器というかゲリラ戦の一つとして利用しなかったのですか?」
「はい。オーウェン家でも騎士団でも木魔法は戦争の道具として使うのではなく、植物と作物の生長と操作、毒という形でしか使い道のない魔法だと教わりましたから・・・」
(そうなのよ!日本のゲームや漫画でもそうだったけど、汎用性がある火魔法や水魔法と比べて木魔法って不遇なのよ!!)
ちなみに土魔法も土木と農業、防御とゴーレムの作成と操作という風に木魔法と比べたら優遇されていると思うのだが、やはり汎用性があって派手な攻撃が出来る火魔法や水魔法と比べたら地味という扱いなのだ。
何で?
何で地味なの?と、当事者であるシェリアザードは心の底からそう思っている。
「シェリアザード王女。後はゴブリンの耳を切り落とし、それをギルドの受付で渡したら今回受けた依頼であるゴブリン討伐は達成した事になります」
「わ、分かりました」
二人で倒したゴブリンが多かったからなのか、ゴブリンを倒した証拠となる耳を切り落としている間に、太陽が出ていた時は澄んだ青い空が暮色蒼然になっていた。
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