Mine

6話 ねえロロたん、秘密って甘いよね?



 やっぱりそうだったんだ〜〜〜〜!!!


 ばくちゃんの直感、マジで冴えてた。いや、もうこれは確信。ほぼ確定演出。


 あの子、ロロたん──地下アイドルの“ロロ”としてステージに立ってる、あのロロたんだ!


(……ふふっ)


 最初にピンときたのは、ペアワークで初めて喋ったときだった。


 高めの声。語尾の抜き方。言葉の選び方。

 配信で毎晩聞いてる“あの声”に、あまりにも似すぎてた。


 ばくちゃん、ロロたんの配信、去年の初期からずっと見てるんだよ?

 ばくちゃんは公式アカウントの登録者が二桁のときから見てた、正真正銘の最古参組だからね!


 とはいえ確信は持てなかったから念には念を入れて次の日にSNSをチェックしてみたら……すぐ答えが出た。


『今日アイドルやってるのバレそうになって焦っちゃった💦』って、モロに書いてるじゃん?


 もう、アホなの!? かわいいけど!!!

 この規模で、顔出して、本名で、大学で何があったかも報告しちゃうって……保護欲爆発するやつじゃん……。


 ステージ写真と、大学での見た目を並べたら、そりゃもう一致。姿勢、まつげ、口の開き方……髪型は地味めなボブだしデッカい眼鏡かけてるけど、ステージではステージ用のウィッグとコンタクトだって事くらいすぐわかる。後はぜんぶ“ロロたん”だった。


(まじで、あの子、ロロたんなんだよ……!!)


 改めて興奮してきた。でも本人が隠してるってことは、知らないふりをするのがマナーかなーとも思った。

 アイドル活動って、もちろん見られるためのものだけど、プライベートまでバレちゃうのは問題だもんね。住所とか特定されたら大変だから。


 でも今日は、ちょ〜っとだけ探りを入れてみたの。


 ばくちゃんが「アイドル顔負けだもん♥」って言ったときの、あの反応!


 ぜったい、ぜったいビンゴ!!!!


 目線が一瞬泳いで、声が一オクターブ上がって、言い訳しながら足が後ずさりしてた。

 しかも、超わかりやすい動揺からの逃走。あれ、完全に図星のやつ!!


 そっか〜〜〜

 やっぱりばくちゃんとロロたんって運命なんだわ〜!


 大学の中に、推しがいて。

 しかも、推しは正体を隠してて。

 ばくちゃんはそれを知ってて。

 本人はバレてないと思ってて。

 でも、ばくちゃんは気づいてて──


(ねえこれ、めちゃくちゃ尊くない!?)


 しかもロロたん、大学では正体隠してるみたいだからそれなりに地味めにしてるのに、ちゃんと可愛くて、ちょっと臆病で、でも笑うとすごくキレイで。


 あんなに必死に嘘つこうとしてたの、ほんっとかわいかった。

 あの時の「そ、そうだ! 次の授業あるんだった!」って逃げ方。何度思い返しても可愛い。

 どうせばくちゃんも同じ授業受けるのに、それ忘れて逃げちゃうとか、ほんとアニメの実写版か何か?? 


(ふふふ……)


 ばくちゃん、心に決めた。


 ロロたんの秘密は、ばくちゃんだけのもの。

 誰にも言わない。知らせない。見せたくない。


 だってこれは──ふたりだけの秘密だもんね。


「ばくちゃんが守ってあげるからね……♥」

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