第19話 「商店街の夏祭りで出店!? ダンジョン風味の屋台がバズる!」



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「今年の夏祭り、久しぶりに屋台出すってよ」


土曜の朝。新聞をめくっていた陽介が、コーヒーを口にしながらぽつりと言った。


「へえ、流行型感染症明けて以来じゃない?」


「出店募集してるって。個人でも申し込みできるみたいだぞ。参加費、材料費別で一万円ちょっと」


「……出ちゃおうかな」


「えっ、ママ屋台やるの!?」


目を輝かせたのは大地。すでに彼の脳内では、たまご焼きが踊っていた。



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✦ ママ友ネットワーク、即動く


午後。何気なくグルチャに話を出してみると――


「絶対出て~!!」


「むしろ買いに行くから!」


「手伝うよ!?当日スタッフやるから!」


想像以上の食いつきに、美咲は一気に申し込みを決意。

出店名は悩んだ末に、《まみ’s ふわ味工房》に決定。


(ちょっと照れるけど……ママっぽさはある)



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✦ 準備期間:屋台用レシピ改良編


お祭り当日まで2週間。

美咲は、現代素材を中心にしつつ、ほんの少しだけダンジョン食材の粉末をブレンドした“セーフな調味料”を開発。


リーノたち異世界組は、魔道具“計量器”で成分を数値化し、現代調味料との照合をサポート。


「0.03ミル程度の濃縮なら、香りは消えるけど、うま味だけは残る」


「炙ることで“異世界っぽさ”はだいぶ中和されるね!」


彼女たちは完全に“研究スタッフ”と化していた。



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✦ 夏祭り当日!


日が沈み始める頃、商店街には人波が戻っていた。


浴衣の子どもたちが走り回り、金魚すくいや綿あめ、焼きそばの香りが漂う。


《まみ’s ふわ味工房》ののぼりは、ちょっと手作り感が強めだが、そこが逆に“アットホームでうまい系”の雰囲気を醸し出していた。


美咲が用意したメニューは3つ。


【名物】ふわとろだし巻き串(1本300円)


【限定】異国の香りきのこ炒め(400円)


【キッズ人気】しゅわしゅわ寒天ジュレ(200円)



すべて試食済み、添加物ゼロ、素材重視。

それが口コミで広がり始め、30分もすると……


「ねぇ、あそこ行列できてない!?」


「なにあれ、テレビ来てる!?」


ローカル局のレポーターが、ふわとろ串を食べながら叫ぶ。


「これは……卵じゃない!?なにこのふわっふわ!!」



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✦ ピンチ!?レシピを聞かれたら……


「これ、どうやって作ってるんですか?」


「企業秘密でしょ~!」


レポーターの問いにまどかさんが即フォロー。

美咲は笑顔で、「ちょっと変わった製法で……」と濁す。


(よかった、危なかった……)


しかし、気になったのは厨房の奥で、大地が同級生にうっかり言ってしまった一言。


「うち、床下にダンジョンあるから!」


「ははっ、ウソだー」


「マジだし!モンスターたまに来るし!」


(こらあああああ!!)



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✦ 無事終了、でも……


夜10時、片付けも終わり、3人はほっとした表情で帰宅。


売り上げは目標の3倍。取材も成功。


ただひとつだけ……


「ママ、今度、テレビ来たら“ダンジョン”も見せてあげようよ!」


「……いや、それは、いろいろ無理!!」


美咲の本音の叫びが、夜空に響いた。



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