第36話クイーンの力
貴重な研究員を正式採用できそうなことだし、私も前座として改めて楽しい実験を始めるべく最初の指示を出す。
「さてではまず様子見と行こう。……戦闘員に相手をさせてみようか?」
「はい。相手は手加減してどうこうできる相手ではありません」
「ふむ、手段を選ばないと言う意味でもいい線だよ」
「……ほどほどでお願いします」
カミラ研究員が最後に不安そうに付け加えたが、出来る余裕があったなら前向きに検討しよう。
騎士達を変身させた戦闘員も、おそらくは魔法の道具であろう鎧付きなのは都合がいい。
私の指示に従い、動き出した戦闘員達は一斉に女王めがけて襲い掛かった。
「……愚かな。騎士では女王はとれんぞ?」
そう呟いた女王様はいつの間にか持っていた大振りの剣を掲げた。
そして無造作に振るわれた剣の一閃は、眩い閃光と発し戦闘員を一撃で薙ぎ払った。
衝撃波のようなもののようだが、グワンと響いた恐ろしく重い音は少なくとも剣一本を振り回したようなものではない。
私は攻撃を喰らった戦闘員の動きがおかしいことに驚いた。
「む!……ダメージがあるとは」
「ほぅ……死なないか。どうなっている?」
私にはダメージの情報がすぐさま送られてきていた。
鎧を切り裂き、内部の外骨格までダメージが到達している。
傷口は鋭いが、火傷のような跡もあるらしい。
「光ったと思ったら焼き切られた? ほほー。かなり強力だなぁ。しかし……」
重要なのは、このダメージなら普通の人間は一撃で死亡だということだろう。
仲間の騎士だとわかっているのにこの躊躇いの無さは、予想以上の割り切り方だった。
女王は不敵に笑い、剣をこちらに突き付けた。
「この国の騎士は国の平穏のためにある。治安を維持するための彼らはいわば人に向けるための力だ。だが私は違う。国を脅かす敵を滅ぼす真なる力を貴様らは目にすることになるだろう」
「……なるほど」
兵を奪われれば王は楽に抑えられるかと少しだけ期待したが甘かったか。
生身でも彼女の実力は雑兵とは格が違う様だ。
「……固いのは認めるが、まさかこの程度の力で、吼えていたのか?」
「さて、そう言うセリフは仕留めてから言っていただきたいね。うーむしかし、どうするか?」
トントンとこめかみを叩きながら、私は生身で戦闘員とまともに戦える女王様の姿に、戦力を上方修正した。
今ならもうしばらくは戦闘員でも戦えそうだが、引き延ばすのはよろしくない。
人はどんどん集まって来るだろう。まぁそれはこちらの戦力増強になるからいいのだが、突っ込んであの光る剣でバカスカ殴られ続けるだけでは、いつまで経っても魔神機を拝むことはできない。
「何かでっかいのをけしかけたいが……さて」
そう思っているとちょうどよく乱入者が、扉ごと壁を壊して転がり出て来たところだった。
「お?」
「な、何ですか!」
叫ぶカミラ研究員ごと包み込み、展開されたシールドの中から目を凝らすと、瓦礫と埃が舞う中、暴れているのはかなりの大型である。
「まったく……お前達、城をどれだけ荒らすつもりだ?」
「……女王陛下! こいつら危険です!」
スピーカーのような音声で叫んでいるのは、先ほど魔物を倒していた魔人機のパイロットか。
そしてその相手をしているのは、家の狼怪人と化したクーシーに間違いない。
狼怪人は私の姿を確認すると、ブンブン尻尾を振っているからご機嫌の様だ。
「おお! 実にいいタイミングだね! では次は……」
まさに、ちょうどいいと私は手を打つ。
しかし好都合だと考えたのは私だけではないようだ。
ご立腹だった女王様もまた私と同じような顔をしていた。
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