第35話問答
「……まさしく狂人の様だ。 お前、私を簡単に殺せると本気で思っているのか?」
「いいや? 思っていないよ? 面倒でも構わないから早く出してくれないか? 女王なら持っているんだろう? ホラアレだ神の力とやらだよ」
温まって来た女王様の視線は、いい感じに殺気が乗っていた。
戦闘とはすこぶる効率的でありながら、激しく感情的な行為だと私は思っている。
目的を達成するために障害の排除が必要だが、人としての倫理観を敵意で踏み越えなければならないからだ。
こいつは邪魔だと判断する強烈な不快感は提供した。ここからは速やかに私を排除する作業に移ってもらいたい。
戦闘に入るなら、等しく人でなしでいこう。そうでなくては見たいものが見れないのだから。
「いいだろう……そんなに見たいと言うのなら見せてやろう。真なる魔神の力をな」
女王様は無事やる気を出して、パフォーマンスがうまくいって何よりだった。
さてどうやって勝負しようか?
試してみたい実験体なら腐るほどある。
だが、ふと完全に始まる前に大切なことを思い出して、私は研究員Bを見た。
「あ……すまない。年甲斐もなく興奮してしまったようだ。君がかましてやらないと始まらないんだったね。ではガツンとやってくれたまえよ」
「ここで丸投げですか!?」
声を荒げる研究員Bは、なにか理不尽を感じているようだった。
「……ベストなタイミングではないかな?」
「なんであんなに煽ったんですか!? 必要ありましたか!?」
確かに、私の中のマッドな部分を抑えきれなかったのは自覚済みである。
「いやぁ。つい盛り上がってしまって……でもほら? 望むところだろう?」
「いえ! 私は別に女王陛下と戦いたいわけではないですからね!?」
「ほぅ……じゃあ、何をしたいのかね?」
「そ、それは……その」
研究員Bは急に勢いを無くす。ここにで言い淀むのが問題だった。
私とてここまで骨を折ったのだ。一つ確認しておかねばならないことがあるとしたら、そこなのだろう。
「そう、そこが重要なのだ、研究員。私が用意した証拠などいくら並べようとほとんど意味はない。君は真実などわかった上でここに来たのだ。では、なんのために? ただ二度殺される目に合いに来たわけではないはずだ。私に命じられたから? それはそうだろう、だがここに来て何かすべき答えはないのかね?」
「……」
「ここからは君の好きにすればいい。真実なんてものは信じたいように信じて構わないのだから。精神衛生上都合のいいように受け取りたまえ。しかし―――身の振り方だけは今決めてもらわねばならない」
「私は―――」
「君はどうしたい?」
答えをかぶせて、私は選択を突き付ける。
残るも出るも尊重しよう。
ただし中途半端はおさまりが悪い。
元の世界なら有無を言わせないところだが、ここは異世界。ある程度穏便に道筋くらいはつけるだけ温情と言うものだった。
「もう一度……ここから連れ出してくださるのですか?」
「私は連れ出した覚えはないよ、全てを知って出て来たのは君自身の選択だ。研究員B……いやカミラ研究員。私は君の選択を尊重しよう」
私は嗤う。
私の手は救いの手なんてものではなく、単なる誘導でしかないのだろうけれども。
カミラ研究員は、自分の回答に到達したようである。
「そうですね……いえ、私のしたいことは単純なのです」
そう言って、カミラ研究員は母親である女王様に視線を向けた。
「貴女の口から真実を聞きたい、ただそれだけなんですから」
「……ばかばかしい。茶番だな」
「ええまったく。それでも付き合ってもらいます。力づくでも」
「ほぅ……本気で私を怒らせたいのだな?」
「先に私を怒らせたのは貴女ですよ?」
女王はようやく立ちあがる。
さてこちらの陣営の方針は決定した。
気休め、大いに結構。世の中大抵の復讐は気休めみたいなものだ。
願わくば、見ているこっちが気持ちよく弾けてくれれば言うことはない。
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