第29話王都散策

「よしよし……うまいこと入り込めたかな?」


 よいしょっと私、ドクタークレイは着込んだ鎧をその辺に捨てて、王都に繰り出した。


 現在の姿はだいたい20代である。


 若いが体が完成し、まだまだ好奇心を忘れていないあの頃は、旅行に最適だった。


 ワクワクと弾む心にしたがって街を歩くと、そこは異国情緒に溢れていた。


「いやいや中々華やかな場所だね。屋台なんかもあって店舗も多い。化け物が跋扈している土地にしてはよくぞここまで発展したものだ」


 こちらの外敵はとても強い。人間の強かさにうむうむと頷き、とりあえず散歩をしてみることにする。


 こちらの人間は元の世界とあまり変わらないようだったが、髪の色と瞳の色は多種多様だった。


「ふーむ。親子すら髪の色は色々なのだね。顔立ちは似通っているかな? やはり魔力の有無が影響しているのか。ああ、店主。その串焼きを一本くれるかな?」


 おいしそうな匂いにつられて屋台に向かうと、ニコリと笑った店主のおやじは愛想よく言った。


「あいよ。この辺りじゃ見ない顔だね。旅行かな?」


「うん。そうだとも。いいところだねここは。でもすごく変わった作りだ。ここの道なんてとても広いし。王城はとっても大きいね」


「んん? そりゃそうさ。王城は……いや、見た方が早いな、王都の名物だぞ?」


「ん?」


 言われてみると、必要以上に広く作られているように見えた道が光っていた。


 光の道は城からまっすぐ伸びていて一体何が始まるのかと私が困惑していると、ゆっくりと城が開いた。


 何を言っているのかわからないと思うが見たままの事だ。


 城の一部がパカリと割れた。


 そして割れた城の中から、巨大な人型はせり上がって来た。


「あ?」


「お客さんラッキーだね。さぁ出てくるぞ? アレが―――魔人機だ」


「まじんき……」


 私もその名前には聞き覚えがあった。


 魔人機と呼ばれた、白銀の装甲を持つ騎士鎧のような巨大ロボットは、全身の関節部から光を放ち、町の道路を滑走路のように使って滑る様に加速すると空の彼方にすっ飛んで行く。


「うお!」


 強烈な風が私の方まで飛んできたが、町はいつものことだと慣れたもの。


 だが私はポカンと口を開けていて、それどころではなかった。


「……」


「大型の魔物が出たんだな。新しい機体はとても美しいなぁ」


「……新しいのかい?」


「おおとも。ようやく新しい魔人機の乗り手が現れたんだ! 次の女王様になるお方は大層美しいと評判だよ! 近いうちに魔神機に覚醒されるはず……ん? あれ? お客さん?」




 私はひょいっと適当な建物の屋根に上がって、それを眺めた。


 何やら真っ赤な瞳のすさまじくデカい空飛ぶ虫と謎のロボットが今から戦うらしい。


 買った串焼きをかじりながら私はあまりにも私の常識から逸脱したロボットに胸をときめかせていた。


「……何アレー最高にバカじゃーん」


 おっと、思わず感想を口に出してしまった。


 しかし至高のバカらしさは、もろ手を挙げて大絶賛したい。


 馬鹿なことを大真面目に調べ上げ、現実とすり合わせて実現して見せた時、私の世界もまた広がるのである。

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