迷惑電話
『電気料金がお安くなるプランがあるんですけど、ご興味ありませんか。
先月から始まったプランで、一人暮らしや高齢者世帯では、基礎料金が……』
まただ。
最近、電気料金や出合い系を謳った詐欺電話がよく来る。
就活用のサイトに登録してからだ。
登録した個人情報がどこからか漏れているのだ。
就活をするのは世間知らずの学生が多く、一人暮らし率も高いため、こういった詐欺にはうってつけの獲物なのだろう。
就活が厳しいからといって、手当たり次第にサイトに登録していったのが間違いだった。
私は自分の浅はかさに後悔しつつ、電話番号を着信拒否リストに入れる。
残念ながら、就活関連の電話の可能性もあるため、知らない番号はでない、という風にはいかないのだ。
しかし詐欺をする様な奴らは無数にいるのか、はたまた無数の電話番号を持っているのか、着信拒否をしても別の電話番号から同じ様な詐欺電話がかかってくる。
(まったく。私は真面目に就活してるっていうのに。
今日も面接だし。)
スマホを置いて洗面台へ行く。
くだらない電話に悩まされるよりも、洗顔の方が大事だ。
朝のメイクの時間は貴重なのだ。
水で乾いた手を湿らし、手に出した泡に顔を埋めた瞬間、また電話の着信音が耳に入った。
『もしもし。水道料金のご相談です。
現在、学生などの所得の低い方向けに、水道費の控除がありまして……
もしご興味がおありでしたら……』
今度は水道料金か。
私のライフラインが今朝だけでコンプリートされてしまった。
就活中という情報から、よくもこんなに色々なパターンの詐欺を思いつくものだと、もはや感心してしまう。
その発想力をどうして真っ当なビジネスに活かさなかったのか、心底不思議だ。
泡だらけの顔を水で洗い流し、側に吊るしていたタオルで、優しく水分を拭き取る。
そして忌々しい詐欺電話の番号を着信拒否するため、隣の部屋へ移動して再びスマホを手に取った。
――――――――――――――――――――
(解説)
主人公は良くないサイトに登録してしまったため、詐欺電話に悩まされている。
しかし、二回目の詐欺電話は本当にただの詐欺電話だろうか。
着信があっただけなら、まだ分かる。
主人公は洗顔中で手が泡だらけだ。
それに加えてスマホは前の部屋に置いて来たのに、いったいどうやって電話を取ったのだろうか。
主人公のスマホにある電話履歴は、一体"何"からの着信だったのだろうか。
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