頭痛
プルル……プルルル……
僕は電話の音で目を覚ました。
着信の相手は、今日遊ぶ予定の大学の友人だ。
大方、ドタキャンの連絡だろう。
僕は憂鬱な気分で電話に出る。
「はぁい。もしもし。なんだよ。」
電話口の声は弱々しいものだった。
『なぁ。俺なんかおかしいんだ。
頭がめちゃくちゃ痛くてフラフラする。
病院に行こうかと思うんだけど……』
やはりドタキャンの連絡だ。僕はそう思った。
なぜなら奴が昨日飲み会でまた、ベロベロになっていたのを知っているからだ。
頭痛とめまいは二日酔いが原因だろう。
しかしそんなことで電話をかけて来たのは、僕に対してドタキャンの理由を体良く説明するためだろう。
「まあ、そんなことだろうと思ったよ。
分かった。分かったから。
水分ちゃんと取って、ゆっくり寝てろ。」
僕はそう言って電話を切ろうとした。
『まってくれ。そうじゃなくて。そこは問題じゃなくて。
家から出られないんだ。』
僕の頭にはクエスチョンマークが浮かぶ。
「家から出られない?どういうことだよ。
そんなに気分悪いのか?」
二日酔いでトイレから出られないとかならまだ分かるが、家から出られないという表現はよく分からない。
入り口のドアに通販の段ボールがつっかえてドアが開かないとか、朝起きたら部屋が異世界ダンジョンになっていたとでもいうのだろうか。
だが、友人の口からでて来たのは意外な言葉だった。
『いや。ドアにたどり着かないんだ。
俺の部屋、ベッドから起きて左側にドアがあるんだよ。でも、何回やっても左に進めない。』
「は?意味わからん。
まだ酒残ってんじゃねぇの。
遊びはまた今度でいいから、まじ辛いなら病院ちゃんと行けよ。」
僕はそう言って電話を切った。
体調悪い時は誰かと話したい気持ちはよく分かる。
だからあいつは電話をかけて来たのだろう。
しかし僕はそこまで暇ではない。
遊びの予定が無くなったら無くなったで、課題や研究室の発表準備などを進めなくてはならない。
ましてや奴は風邪などではなく、二日酔いだ。
付き合ってられない。
僕はパソコンを開きつつ、ドタキャンの代償に何を奢ってもらうかを考える。
―――――――――――――――――――――――
(解説)
主人公は友人が二日酔いだと決めつけていたが、本当にそうだったのだろうか。
ところで、脳梗塞の初期症状には頭痛やめまいに加えて、まっすぐ歩けなくなるというものもある。
脳梗塞は高齢者のイメージが強いかもしれないが、10代からでも発症の可能性がある。
特に"友人"はお酒を飲む機会が多い生活を送っている様子だ。
飲酒による高血圧は脳梗塞の可能性を上げていたのではないか。
主人公は助けに行くこともなく電話を切ってしまったが、"友人"は果たして無事に病院まで辿り着けるのだろうか。
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