第2話「出発」

テントの中からでもわかる暖かく柔らかな光。

スピカはテントから目覚め、外で背伸びをした。

「いよいよか…。」

少し緊張もありながら、楽しみで心が溢れている。

それもそのはず。


昨夜。焚き火を囲んで話している最中。

「これからどこに向かえばいいんだ??」

「ガイト。神父様の話を聞いていましたか??」

「いや。全く。」

「はぁ…」

イレフが眼鏡を押さえつけながら、ため息を吐き出した。

「じゃあ、僕が説明するよ。」

とリチャードが手を挙げ、

「これからは、僕たちの修行する場所を教えてもらいに行くんだよ!!そのため今はマジックシー国から、トリックムーン国の教会を目指しているんだよ!」

と説明をし、理解したガイトは手をポンと叩いた。

「そうだった!!説明ありがとな」

「いえ〜」

リチャードが微笑んだ。

「明後日、修行する場所が知らされるんだもんね〜楽しみでしかないよ!!」

「リチャード、僕めっちゃ緊張してるよ…」

「大丈夫だよ!スピカにあった場所が伝えられるから!!緊張することないない!」

修行する場所は母国の教会で知らされるのではなく、トリックムーン国にしかない診断鏡しんだんきょうがその人を診断し、適した場所を示す。示された人はその場所へ赴き、修行を行う。


その事からスピカは心が優しく騒いでいた。

朝食の準備でもしようかと炊事場へ向かったら、ガイトがもう手際よく食材を切って、調理していた。

「ガイトおはよう!」

「おう!おはようスピカ!」

「朝起きるの早いんだね」

「立派な鍛冶屋になるためには、体力と規則正しい生活と繊細さだからな!職業をもらってから毎朝早く起きて、いろんなことしてたんだ!」

ガイトも修行に出る前から準備をしていた。

「今日は俺が作るから、もうすぐしたらイレフとリチャードも起こしてきてくれないか??」

「いいよ〜!じゃあ、起こしにいくまで手伝うよ!」

「まじ!助かる!!じゃあ、そこの網で…」

と朝食の手伝いを済ませ、イレフとリチャードのテントに向かった。

最初にイレフのテントの外から声をかけたが、全然反応がない。

「入るよ〜」

とテントの中に入って、体を少し揺らしたら、イレフはすぐに起きた。

「イレフおはよう!」

「スピカさん。おはようございます!起こしてくださりありがとうございます。」

イレフは深々と礼を下げる。

「いえいえ〜!これから朝食だから、昨日の焚き火辺りに集合で。とガイトが言ってたよ〜」

「わかりました。身支度を整えたらすぐに参ります。」

イレフを起こし、リチャードのテントに向かった。

リチャードも外から声をかけたが、反応はなし。中に入ると、ものすごく大の字で寝ているリチャードがいた。

「リチャード!おきて!朝!」

と大きな声で体を強く横に揺らし、リチャードを起こした。起きたら状況の整理が追いついていないのか

「ふぇ??」

と寝ぼけた声で応答している。

「朝食!もうすぐできるよ!」

「はぁい〜」

寝ぼけながら、身支度を済ませ、ともに焚き火のもとへ向かった。

昨日座っていた丸太のベンチに美味しそうなベーコンチーズサンドと、野菜のキッシュが盛り付けされていた。

「美味しそう!!」

リチャードは美味しそうな匂いで目が覚めたようだ。

「さぁ!冷めないうちに早く食べようぜ!!」

「いただきまーす!!」

と四人で手を合わせいただく。ガイトのベーコンチーズサンドは温かく、パンのサクッ!とした音やベーコンの肉汁がジュ!と美味しそうな音を奏でている。

あっという間に食べ終え、出発の時になった。

「行きましょうか!」

イレフは白衣にシャツ。ベルトには試験管が差し込まれており、かばんの中は薬品の音がする。いかにも医師と伝わってくる服装である。

「いくぞ!!」

ガイトは動きやすいオーバーオールで、ポケットに厚手の手袋や、工具や戦う時の担当を入れるベルトを装着している。頭には丸形のゴーグルをつけ、その場で手入れができそうな状態だ。

「楽しみ!!」

リチャードは金属の篭手と臑当を身につけ、ジャケットとシャツとシンプルだが、お洒落な服装。腰には武器が。

「トリックムーンこくへ!!」

スピカは金属の篭手を身につけ、ジャケットにシャツ・ベスト・長ブーツという服装。腰にはスピカの愛剣あいけんを携えている。


四人はキャンプ場を出発し、トリックムーン国を目指す。

しばらくしてのどかな草原が顔を出した。

「綺麗!!初めてこんなに大きな草原見たよ!」

「たしかに!!マジックシーにはこんな大きな草原ないもん!リチャード流石!」

「落ち着くね〜」

とスピカとリチャードで草原を観ながら癒されていると、後ろから、

「マジックシーにもそうげんあったよな?イレフ?」

「たしかにありましたね!マレー町の学校の遠足でマレーの草原に行きました!」

「マレーの草原懐っ!」

「マレーの草原…??」

と『マレーの草原』を知らないスピカとリチャード。

「スピカとリチャードどこらへんに住んでいるんだ??」

「僕は首都のソワレの辺りかな??」

「僕は、スピカがすんでいるソワレから少し離れたセイレに住んでるよ〜!」

「そこら辺からマレーの草原遠いですもんね…」

と故郷であるマジックシー国の話をしていたら、目の前に馬車が止まっていた。

すると!馬車の持ち主であろう御者がこちらに向かって、走ってきた!!

「すんません!!助けてください!!」

「何があったのですか??」

「ゴブリンが襲ってきて、戦えなくて…」

「わかりました!皆さん!行きましょう!」

「うん!」

と目の前の馬車までいくと、三匹のゴブリンが馬車に積まれていたレタスを食べている。

「おい!人のものたべるな!」

とガイトが忠告すると、こちらを向き飛びかかってきた。

「もうやるしかないね。」

スピカとリチャードは武器を鞘から抜き、華麗な剣さばきで、三匹同時に倒した。

ゴブリンは塵となって空へ舞っていった。

「ありがとうございます!!!」

と御者が走ってお礼をする。

「何かお礼をさせてください!!」

「それじゃあ、この馬車に乗せていってくれないでしょうか??僕たちトリックムーン国を目指していて…」

「あぁ!修行の方でしたか!申し訳ない!喜んでトリックムーン国まで乗せていきましょう!」

とリチャードの交渉により、トリックムーン国まで連れて行ってもらった。

時はもう夕方で、町の明かりがどんどん灯っていく。

「本当に今日は助けてくださり、ありがとうございました!私、教会前のパン屋を営んでいるので、お腹が空いたらいらしてください!それではまた!」

と御者は深々と頭を下げ、帰っていった。

「よし!俺らも宿に向かうか!」

「そうだね!」

そこからディナーを済ませ、宿まで歩き、チェックインをした。今回は、二人二部屋なので、リチャードとスピカ。ガイトとイレフで泊まることにした。


ーリチャードとスピカー

二人は、身支度を終わらせ、ベッドに潜っていた。

「ねぇ。リチャードの武器って『日本刀』?」

「そうだよ〜!」

「今日の戦闘で黒の刀身がいろんな色輝いていて、めっちゃかっこよかった!」

「ほんと!!うれしいな!」

と照れくさそうにするリチャード。

「実を言うとね、あのキラキラ宝石なんだよ」

「エッ!?」

「経緯がちゃんとあって、僕は剣より刀の方が扱い易くて刀を使っているんだけど、父上が…

『普通のではだめだ!!刀鍛冶に頼んで宝石を入れてもらおう!そしたらキラキラと輝いて美しいし、強くなるであろう!』

と考えられて、今に至るって感じなんだよね」

「へぇ〜。リチャードのお父様見た目も強度も考えられててすごい!かっこいい!」

「そこが尊敬できるんだよね〜」

「いいじゃん!」

「スピカのお父様もかっこいいよ。スピカに向けての言葉が本当に良すぎるし、今のマジックシー国騎士団長でしょ!すごすぎだよ!」

「僕もいつかなれるよう頑張らないと!」

「僕もだ!!」

「じゃあ、明日のためにもう寝よっか」

「そうだね」

「おやすみリチャード。」

「おやすみ。スピカ。」



ーガイトとイレフー

こちらも身支度を終わらせ、ベットに潜って話していた。

「同じ部屋で寝るの久しぶりだな。学校の遠足以来か??」

「そうですね。なんか懐かしいです。」

「懐かしいよな〜あの頃、ずっと起きてて先生に怒られたよな」

とガイトは笑う。

「そうですね。基本的にガイトが原因ですけど。」

「えぇ〜冷たいこと言うなよな〜!」

「冷たくありません!だって、ガイトが騒がしく騒いで、夜中に部屋を抜け出そうとしたからじゃないですか!」

「イレフもその話のってたじゃ〜ん」

「まぁ…ね、」

「だな」

一間空いてガイトが話す。

「いや〜これから楽しみだな!!これから長い旅行みたいな感じでいいよな!!」

「そうですね!いろんなところを四人で探検することになりますね。楽しみです!」

「おっし!明日のために今日はめっちゃ速いが寝るか!」

「そうですね。また騒がしくしていたら、宿の方に怒られてしまいます。」

「それは嫌だからもう寝る!おやすみイレフ」

「おやすみなさいガイト」


寝ているスピカ・リチャード・ガイト・イレフを月光が照らす。優しく包み込み、四人の未来が見据えているかのように笑っている。



第2話「出発」(終)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る