スピカと四人の勇者
神宮寺時輝
序章
その瞬間!白い閃光が僕の周りを飲み込んだ…。閃光が輝き終わるとみんな僕の方を向いて息を飲んでいた…。
第一話 「満月」
この世界は15歳になって最初の満月の夜に、右手を月にかざすと自分が将来なる職業のマークが、右手の甲に現れる世界。その職業になるため2年間の修行の旅に出て、その職業を全うする。という世界。ここトリックムーン国も例外ではない。1人街を歩く美少年がいた。
『僕はスピカ・スターナイト。僕の家系は代々王家直属の精鋭騎士団の団長を務めていたり、歴史に名を残す程の偉業をなしとげている。
だから多分、家族皆僕も騎士になるであろうと予想はしている。僕もそう思っている。
街を歩いている時や、スターナイト家の屋敷で過ごしている時も、働いている人は絶対にいる。街の出店をやっていたり、屋敷で僕たちの事をサポートしてくれたりすることを仕事にしている人たちは、全て全員その15歳の時にもらった職業を全うしている。みんな生き生きと行っているため、素敵だなと毎日思っている。
そして…いよいよ僕の番が近づいてくる。
スピカ15歳の誕生日の夜。
スピカの今年は盛大なパーティーが庭園で行われている。いつもは父上、母上、兄さん、姉さん、弟、妹と屋敷の執事やメイドと祝っているが、この国で重要な『15歳の誕生日』ため、他国からの親戚も多数来席している。ちょうど、兄さんと姉さんは修行にでているため、いない。
「スピカ。そろそろ月に手をかざしてみたらどう?」
と父上が肩をたたいて、言ってきた。
「はい」
緊張しながら席を立ち、少し離れた広場に移動した。
後ろに振り向くと、父上、母上、弟、妹と親戚がみまもっている。
満月が薄い雲から全ての顔を出した時、右手をかざした。
その瞬間!白い閃光が僕の周りを飲み込んだ…。閃光が輝き終わるとみんな僕の方を向いて息を飲んでいた…。
「スピカ!」
と父上・母上が僕の元へ駆けつける。
「大丈夫か?!何か体に異変は??」
「大丈夫??」
と二人は少しパニッと二人とも少しパニックになっているが、僕の右手の甲を見た途端息を飲んだ。
普通は一人一つの職業を表すマークが現れるのにも関わらず、僕は二つ現れている。
「これは…。とりあえず、私は馬を出す。スピカを教会へと連れて行く。ノアは今来ていただいてる方々の対応を。」
「わかりました」
父上は的確な指示を行い、母上はその事態に焦らず冷静な態度で言うと、皆のもとへと駆けつけていった。
「さぁ、スピカ行こうか」
と父上に手を差し伸べられ、そのまま教会へ向かった。
たどり着いた教会は、静けさと月光に照らされいつもより神々しかった。
父上と中に入ると、祈りを捧げてる白ひげの優しそうなおじいさんがそこにいた。神父様だ。
神父様は僕たちに気づき、歩み寄ってきてくださった。
「神父殿!!」
「今宵はどうされましたかな?ダイヤ殿。」
「スピカの手に…」
父上は僕の右手の甲を見せた。神父様は興味深そうに言った。
「騎士と、魔術師…。今まで二つ職業を持つ者はみたことがありません…。それもとても珍しい組み合わせです。
騎士はスターナイトのご家系から受け継がれていますが、魔術師は発生率がとても少なく、貴重な職業となっております。
魔術師の由来につきましてはわかりませんが、二つ職業が現れたことは推測でしかありませんが、言えることがあります。」
「その推測とは…??」
父上は神父様に尋ねた。
「多分、スピカ様の目にご関係があると思われます。」
神父様も、父上も僕の目を見た。確かに僕の目は、右目が黄色。左目がロイヤルブルーのオッドアイである。
その目が関係しているともいえるであろう。
「これからの修行のことを考えますと、四人ぐらいで行動した方が安全だと思います。また、3ヶ月ぐらいあとに修行出発という形がよろしいかと。」
「そうですね…。」
騎士ではなく、魔術の勉強もしてから修行を行った方が力に慣れたり、何かあった時のための四人グループ活動が最適だと思い、僕も同意した。
教会に差し込む月光が微笑んだ。
ー翌朝ー
さえずる鳥の鳴き声と、夏を告げる温かい日光が部屋に差し込んできて僕は起きた。
右手の甲をみると、騎士と魔術師のマークがあった。
「昨夜のことは本当なんだな」
ベットから立ち上がると同時に、メイドがドアをノックし、部屋に入ってきた。
「スピカ様。おはようございます。」
「おはよう」
とにっこり笑い、身支度を済ませた。
「本日は皆様お忙しく、もう朝食を済まされているのですが、どうされますか??」
「う〜ん、部屋で食べようかな!」
「わかりました。」
メイドはすぐに朝食を取ってきてくれた。
「それでは、ごゆっくり。」
と言うと、自分の仕事の方へ戻っていった。
「いただきます。」
美味しくてあっという間に食べ終え、少し屋敷の中を散歩することにした。
しばらく歩いていると、父上が走って向かってきた。
「スピカ!これをあげよう」
父上が渡してくださったのは、魔術の本だった。
「いつもの練習とかに加え、勉強して実践してみてくれ。何か足りないものがあったら父さんに言ってくれれば用意するよ。」
父上がおっしゃった。
「ありがとうございます!」
父上が朝早くから魔術の本を探し回ったことが、なんとなく分かって心から嬉しかった。
すると後ろから、
「スピカ、おはよう」
と母上が声をかけてくださった。
「おはようございます!」
「今日午後三時に私の部屋へ来てくれるかしら??」
「わかりました!」
それからというもの、勉強して練習して休憩してを繰り返していたら、あっという間に母上との約束の時間になっていた。
僕はすぐに母上の部屋の前に行き、ノックをした。
「母上、スピカです。入りますよ。」
「どうぞ」
母上の声でドアを開けた。
「座りなさい。」
母上は僕に腰掛けるようにと促した。僕は目の前の椅子に腰掛けた。
「お茶とお菓子を持ってきてくれる」
「かしこまりました。」
目の前には次々と、宝石のように輝くスイーツが置かれていった。
メイドはティーカップに紅茶を注ぎ、目の前に出してくれた。
「さぁ、いただきましょうか」
紅茶を一口飲んで、母上がおっしゃった。
「昨夜からどう?何かおかしなところとかない??」
「はい、元気です!!」
「よかったわ〜。何かあなたの体とかにあったら怖くて…」
母上は胸をなでおろした。
「あなたが、職業二つ。それも、騎士と魔術師という滅多に慣れない職業をいただけたことが本当に嬉しいわ。」
「ありがとうございます。」
「大変だと思いますが、これからも頑張ってくださいね。」
「はい!!」
「さぁ、たくさんお食べ♪シェフにマスカットのタルトを作ってもらったの、美味しいから食べてみて」
母上が差し出してくださったマスカットのタルトは、とても口溶けがよくこれまでにないくらい美味しかった。
「おいしいです!!」
「よかったわ〜」
母上との茶会が終わってからしばらく経った夜の事。
僕は庭で的に向かって、魔術で火を飛ばす練習をしていた。
「イグナイト!」
右手からは真っすぐに、的に向かって火が飛んでいった。見事に命中した。
魔術は正しい詠唱をしないと、上手く発動しないことがわかり、毎日練習している。
「よし!上達してきた!最後にもう一回だけ練習しよう!」
的にまっすぐに立って、唱えた。
「イグナイト!!」
火はまっすぐに的に命中した。だが!!飛び散った火の粉が屋敷の建物に引火した。
建物に向かって、走って行った時には遅かった。木造建てだった屋敷に、火の手が覆った。
次々と中にいた人達は外にででくる。父上、母上、弟、妹と次々と出てくる。
バケツを持って、消火活動に勤しんでる中、手伝おうとは思ったけど、手伝うことはできなかった。
幸い、死傷者は出なかった。だが、僕の頭と心には罪悪感でいっぱいだった。
その後父上が、
「どうしたんだ?何があったか説明できそうか?」
と優しい声で、落ち着かせながら状況を整理してくださった。全て僕は話した。
「そうか。スピカ。」
と父上が僕の肩を掴み、目を合わせた。
「今罪悪感でいっぱいだと思う。だが、得たものは多いはずだ。この得たものはどうするかはスピカ次第だ。」
と頭をなでてくれる。
「まぁ、父さんこの家隙間風が多くて、どうしようか悩んでいたんだ。スピカが帰ってくるときまでに、立派な隙間風がない家を作っておくよ。何か、これが欲しいとかあったら、言ってくれれば追加しておくよ。」
「ありがとうございます父上。」
父上の明るい話で、暗かった気持ちが明るくなった。
「さぁ!!成功するようにたくさん失敗して、成功するのが一番いい!!強くなってこい!!ゆけ!スピカ・スターナイト!!」
父上のその言葉に押されて、修行に行くことが決まったんだ。』
「って言うのが、僕の修行に行くまでの話ね。」
僕はキャンプ場で焚き火を囲みながら、修行に行く仲間と話している。
「そうなのか!これからよろしくね!!」
と手を差し伸べてくれたのは、金髪で赤い瞳をしている男の子。騎士。リチャード・フランシス。
「まぁ、家のものを破壊することは俺もあるからな〜」
元気な声で話しているのは、黒髪短髪の日焼けした肌で黄色い瞳をしている男の子。鍛冶屋。ガイト・ブラック。
「ガイトの方が何回も家のものを破壊してますし、この中での破壊神はガイトですね」
冷静に物事を言っているのは、眼鏡をかけた黒髪短髪の緑色の瞳をしている男の子。医師。イレフ・ユナイト。
「本当に、スピカさんの目は不思議で綺麗ですね」
「本当にそうだよな!!髪の紺色と相まってめっちゃ綺麗!」
「なんか星空みたいだね」
とイレフ、ガイト、リチャードから詰められる。
「ありがとう!星空…そういえば今日の空綺麗だよね!!」
スピカは指で空を指した。
「たしかに〜!」
「あれは水瓶座ですかね…??」
「ぽいっな」
頭上にきらびやかに輝く星空に見とれてしまった。
少し経ったあと、ヒューと頬を掠める冷たい風が吹いた。
「寒!!」
「そろそろテントに戻りましょうか。」
「さんせー!!」
焚き火の火を消し、各々のテントに戻る。
明日から、四年間イレフ・ガイト・リチャードと行動できるのはとても楽しみに眠りにつくスピカだった。
星達が今晩も街や人を照らす。
序章・第一話「満月」(終)
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