ワイドアイランド王国出張報告書 ~永遠のじゅうななさい、ギルドでAIを語る~
音無 雪
第1話 国家間超高速馬車とじゅうななさい
「うわぁ 最新型国家間超高速馬車シルバーファルコン号って名前は勇ましいけど、乗り心地はシルクのように滑らかね」
腰まで伸びる長い黒髪を揺らしながら、聖女ゆきは感嘆の声を上げた。もっとも、その声が聞こえるのは、彼女が付けているAI搭載ネックレス「姫子ちゃん」だけなのだが。
ゆきは、自称「じゅうななさい」。その実年齢は国家機密……というわけではなく、単に誰も知らないだけである。
彼女の任務は、中央政府魔法技術局からの特命を受け、ここから遥か西方の「ワイドアイランド王国」へ赴き、かの地の商業ギルドで「AIの利用方法講座」の講師を務めることだった。
(それにしても、AIよ、AI この私がわざわざ出向いて教えるなんて、ワイドアイランド王国も隅に置けないわよね。まあ、私の聖なる魅力と天才的な頭脳をもってすれば、どんな頑固な商人たちもイチコロ間違いなしだけどっ)
シルバーファルコン号の窓の外には、目まぐるしい速度で景色が流れていく。深い森を抜け、きらめく湖を横切り、やがて前方に広大な海が見えてきた。ワイドアイランド王国は、その名の通り、海に浮かぶ大きな島々からなる海洋国家だ。
「見えてきたわ、姫子ちゃん あれがワイドアイランド王国の玄関口、通称『水上都市アークレイ』よ」
アークレイ中央駅は、海上に建設された巨大な人工島の上にあり、その威容はまさに異世界の城塞を思わせる。朱塗りの巨大な鳥居のようなゲートが、ゆきたち訪問者を歓迎するようにそびえ立っていた。国家間超高速馬車が静かにホームに滑り込むと、ゆきは深呼吸を一つして、新たな冒険への期待に胸を膨らませた。
永遠のじゅうななさい、いざ、ワイドアイランド王国へ
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