エクソダス
人間というものは実に愚かで、神様のお告げと詐欺師の戯言を見分けることもできないのです。
「今から十数年のうちに、この国は滅ぶ。たった1人の人間のために」
その占い師の言葉を信じたエジェントの国王パロは、国に生まれる新たな男児をすべて殺すように命じました。
人口は減っていき、人々は老いていき、人手が足りなくなり、農地は荒れに荒れ、それから十数年のうちにエジェント国は自然消滅してしまったといいます。占い師の予言は正しかったのです。
さて、そうして滅び行くエジェント国の隣にあるヌンノウ王国に亡命した夫婦が1組ありました。その奥様のお腹には、尊い命が宿っておりました。彼らは深い深い森の中を、蛭や蛇に怯えながら、なんとか通り抜けることができたのであります。
そうして、冬の寒い真夜中に、当てもなく風に吹かれて彷徨っていた彼らを憐れんだプリミ村の羊農家が、ひと晩だけ小屋を貸してやると申し出たのであります。
決して恵まれているとは言えない環境で生まれた女の子。その名は、テーマパーク。神様のお告げに則り、彼女はそう名付けられたのでした。
・・・・・・。
「あの、以前話していたテーマパークの女の子。普通に人間として転生しちゃってるんですけど」
ははっ!そうだね、それがどうかしたの?
「いえ、ですから、その、例えば、テーマパークに宿る魂として生まれ変わらせてあげれば、動けないですし、そもそも無生物になっちゃいますけど、それでもその方があの子の願った通りテーマパークになっていることに違いはありません。どうして人に生まれ変わらせてしまったのですか?」
じゃあ、君は幼い頃に[ヒマワリになりたい!]と私に言ったとするよ。それでヒマワリとして転生した。その決定を君は恨まないでいてくれるのかな?
「・・・・・・たぶん酷く恨むと思います」
そうでしょう?だって人は神の似姿なんだもん。人であった過去を持つ存在は、人以外になりたいとは普通思わないんだよ。口では人ではない何かになりたいなんて言ったって、何も知らないからそう言えるだけなんだから。
「でも、あの子はもうテーマパークになれないじゃないですか」
だぁいじょうぶ!
「何が大丈夫なんですか」
あの子は人のまま、テーマパークになる。私がそう言うんだから間違いないよ。テーマパークになる運命の子なんだから。
「いや、ですから、仰っている意味が分からな」
気になるならさ、君が見守ってあげなよ。あの子が人のままで、テーマパークになっていく姿を。
神様は物分かりの悪い私に嫌気が差したようで、ふつと私の前から消えました。こうなるともう、戻って来るまでどうしようもありません。
私は、その女の子のこれからの人生を、見届けることにしました。
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