(エリオット×ミチル)「肌荒れかな?」

「はあぁ……」


 突然ミチルがマスクをかけた。更に溜息を吐いている。

 エリオットは読んでいた魔法書を閉じて、ソファで沈んでいるミチルの隣に腰かけた。


「どうしたんだよ、ミチル? 具合でも悪いのか?」


「具合……悪いことは、悪い……」


 がっくりと項垂れながらミチルがそう答えると、エリオットは真面目な顔になってミチルの額を触る。しばらく触って首を傾げると、今度は両手で首元を包むように触った。そこでも首を傾げた後、ミチルの両のワキの下に手を差し入れる。



 

「……ふふっ」


 一連のエリオットの動きにミチルが少し笑うと、エリオットはワキの下をそのままコチョコチョくすぐった。


「にゃあ! くすぐったい!」


「熱はなさそうだけど?」


 とりあえず思う存分ミチルを触れてご満悦のエリオットに、ミチルはマスクの上からでもわかりやすく不貞腐れて言った。


「体調が悪いんじゃないよぉ……でも、これも体調のうち?」


「なんだよ、ブツブツ言って。ハッキリ言えよ!」


「あのね……」


「うん!?」


 エリオットはミチルに何か異変があるのを早く知りたくてたまらない。心配もあって、語尾が強くなる。するとミチルは少し勿体ぶって、マスクの中、くぐもった小声で言うのだった。


「お肌の……調子が、悪くって」


「んん!?」


「ニキビ、出来ちゃって……」


 恥じらって、まるで「コドモ出来ちゃって♡」みたいに言われたエリオットは、ほっと安心したと同時に興奮もした。

 

「見せて!」


「オレがマスクつけた意味わかってる!? 見せたくないからでしょうが!」


 嫌がるミチル。

 エリオットは考えた。

 どうすればそんなレアミチルが見れるかを。



 

 マスク越しにぶっちゅうう……!


「……ふぐっ!」


 マスク越しにはむはむ……っ!


「ううん……♡」


 エリオットのマスク越しキッスにミチルが翻弄されている間に、エリオットはミチルの耳元からマスクを外した。


「隙ありぃ!」


「あっ!」


 マスクを剥ぎ取ったエリオットが見たのは、アゴに小さな紅い斑点のついたミチルの赤面カワイイ顔だった。



 

「あー、なるほどねえ……」


 エリオットはその場所を確認してニヤニヤが止まらない。


「バカァ。どうすんのさ、これ」


「残念だったな、ミチル。それは絶対に消えねえよ」


「ええっ! ウソ!」


 ミチルはアゴを抑えて慌てた。

 隠そうとする仕草もカワイイ。そんなミチルの顔に現れた想いの証。



 

「──おれがいる限りな」


 そう、それは。

 『想われニキビ』

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