171.鍛冶師さん、あがき◆

「なぁ、ミスト君、"契りの剣TM"の弱体化を抑える付与ってやはり難しいのか……?」


 作戦会議の中で、ジサンはミストにそんなことを尋ねていた。


「そうですね……少し説明させてもらうと、そもそも自分が付けられる付与は"通常の付与"と"戦闘中の付与"があります」


「なるほど」


「通常の付与では、ご存知の通り、"攻撃"、"速度"、"属性"といった一般的な底上げ効果を付けることができます。要は武具本来の力を底上げする効果ですね。一方、やや特殊な効果が付けられるのは"戦闘中の付与"になります」


 ジサンはふむふむとミストの話に耳を傾ける。


「一応、今でも"契りの剣TM"には一般的な付与は付けてはいますが、元々の性能がテイムに特化しているので、武器そのものの強化という意味では、効果はそこまで芳しくないですね……」


「そんなことないと思うけど……」


「そう言ってもらえるのは有り難いですが……」


 ミストは照れくさそうに微笑む。


「で、本題ですが、より特殊な効果を付与できる戦闘中の付与ですが、わりとあらゆる効果を付与できます」


「本当、すごいですよね!」


 近くで聞いていたシゲサトがミストを褒める。


「兄貴、有難うございます。で、手っ取り早く"契りの剣TM"の弱体化を取り払ってくれる効果を付けられたらいいのですが、残念ながら"契りの剣TM"に弱体化を抑制する効果は付与できませんでした」


「そうなのか……」


「えぇ……恐らく"契りの剣TM"には100パーセントテイムできるという規格外のテイム効果が付いている代わりに強い弱体化のデメリットがあります。ある意味、これは呪いの剣です。この呪いを手軽に解呪できないように設計されているのでしょうね」


「じゃあ、諦めるしかないか……」


「ただ一つ……アイデアがないこともないです」


「え……?」


「実はこんな方法なんですが……」


 なぜかミストはニヤニヤしながら耳打ちするように言う。


「えっ? そんな方法、うまくいくか……?」


「どうでしょうね……でも姉さん、意外と可愛いところありますし」


 ◇


 "弱体半減"


 現在、ジサンの武器に付与されている能力だ。


 強化倍化を反転させるよう仕向けたミストの最後の策略(あがき)であった。


「さて……サラ……続きだ……」


「……!」


 全力で戦うが故に本当にミストに欺かれたサラが僅かながら動揺している間にも、ジサンはサラに急接近し、攻撃を加えはじめる。




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