第五話・平行歴史から歴女の百合を二名……召喚転移させる

 二日後──今度は別のグループから、湯琉 ユリは異世界トンネルに来てくれるように頼まれた。

「平行歴史の中から二名ほど、呼び寄せても無難な百合歴女を選出しました……立ち会ってください」

「二名? 少ないわねーぇ」

「歴史上の人物が、女体化した世界では、呼び寄せたら何をしでかすか、わからない連中ばかりなので……この百合島2がメチャクチャになるかも知れません」

「わかった」


 ユリがマツリと一緒に、異世界トンネルに行くと配線が変えられ、別の色のトンネルになっていた。

「異世界トンネルか、から、平行仮想歴史トンネル……略して【歴史トンネル】に変えました……これで、百合歴女を二名召喚移転できます」

「呼び寄せるリストを見せてーぇ」


 ユリは選出した人名に横線が引かれた、プリント用紙を眺める。

「源義経……織田信長……ラインナップが豪華ね……紫式部くらいなら、引き寄せの候補に入れても良かったんじゃない、なんで横線で消してあるの?」

「式部は妖艶な百合すぎて……確かに百合の源氏物語なんかは、書いてくれそうですが……暴走したら制御できないので」


「ふ~ん、だからこの二名か……大丈夫? 最初に召喚転移させた百合、口から血を吐いて絶命しない?」

「百合歴史女子の世界では、発病していないみたいですよ」

「それならいい……承諾」


  ◇◇◇◇◇◇


 トンネルに稲妻が走り、漂う霧の中から、若くて小柄な女性剣士が現れた。

 後ろ髪をポニーテールのように束ねた、女性剣士の着物の袖を見た、所員の一人が隣の所員に小声で言った。

「あのギザギザ模様って……新選組よね」


 現れた女性剣士は、周囲をキョロキョロ見ながら、トンネルから出てきた。

「ここは? 池田屋ではないですね? 近藤さんや土方さんはどこに?」


 てっきり、沖田 総司そうじが呼び寄せられたと思ったユリが、現れた美形の剣士に向かって訊ねた。

「あなた、沖田 総司?」

 美形剣士は、怪訝な表情をする。


「沖田 総司……あんな身長が高くて、浅黒いヒラメ顔の男と一緒にしないでください……総司が得意とする〝三段突き〟のマネごとならできますが」

 歴史トンネルの責任者が、小声でユリに囁く。

「平行世界の歴史ですから、多少変化しているみたいです……この人、沖田 総司じゃありませんロックオン失敗して、別の人で百合寄りの人を呼んじゃいました……沖田 総司なんてヒラメ顔で美男子じゃありません」

「総司じゃない? じゃあ誰?」


 二人の話し声が聞こえた、百合の美剣士が言った。

「ボクの名前は、佐々木 愛次郎ささき あいじろう

「それ誰?」


 新選組に詳しい歴女の所員が、驚きの声で言った。

「隊中美男五人衆の一人に数えられた、佐々木 愛次郎⁉ 感激です! サインください」

 なんか、凄い隊士らしい。


  ◇◇◇◇◇◇


 佐々木 愛次郎に続いて二人目の、百合歴女の召喚転移がはじまった。

 稲妻が走るトンネルを見ながらユリが呟く。

「横線で消されていたけれど、森 蘭丸あたりなら召喚してもよかったんじゃにゃい?」

「森 蘭丸なんて、よく色男だと思われていますけれど……実際は筋骨たくましい大柄な男だったらしいですよ、信長よりも身長が高くて信長の方が蘭丸に抱かれていたみたいです、ちなみに小野小町の美人説も後世に勝手に作られたモノで」


 そんな会話をしている間に、霧の中からニュッと長い槍の穂先が出てきた。

 とてつもなく長い槍だった。

 そして、その槍を持った長身の女性が現れた。

 数珠を体に巻いていて、眼光は鋭い。

 九メートルの槍を持った長身の女性は、そのまま歩いてトンネルから出てきて言った。

「ここは、戦場ではないようだな? ここはどこだ?」

 ユリの誰? の問いかけに長い槍を床に置いた長身女性が答える。


「わが名は……本多平八郎忠勝ただかつ

 その名前を聞いた歴女が興奮する。

「本多 忠勝⁉ 戦国最強の武将! サインください!」

 忠勝も愛次郎と同様に気さくに、サインをしてくれた。


 こうして、歴史トンネルから【佐々木 愛次郎】と【本多 忠勝】の二名が召喚転移された。

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