第27話 猛攻
莉乃が暮らしているタワーマンションまではゆっくり飛んでも5分もかからなかった。俺は赤い色の椅子が置かれている部屋を見つけると、ベランダに降り立った。
莉乃は完全に意識を失っているようで、体から力が抜けていた。俺はまず靴を脱いでから、お姫様抱っこの体勢で莉乃を受け止めると、窓を開け中に入った。空中に体を浮かべたまま、莉乃の靴とヘルメットを脱がすとゆっくりベッドの上に莉乃を乗せた。
「ふう、とりあえずこんな感じでいいか」
俺もヘルメットを外し莉乃を見てみる。スースー寝息をたて、気持ちよさそうに寝ている。
改めて見るとやはりとてつもない美人だ。もし莉乃が世間に対して顔出しをしたら、すぐに世界中の人間に注目されて、あらゆるメディアに引っ張りだこになるだろう。
まともな人間だったら一目見ただけで虜にされてしまうかもしれない。俺は好きな人がいるから大丈夫だけど……。そんな魅力が莉乃にはあった。
ちらっと周りを見ると、ベッドの近くにグレーのソファが置かれており、そこには脱ぎっぱなしの服や下着が置かれていた。生活感あふれる光景に俺は居た堪れなくなり再び莉乃に視線を写した。
莉乃はスーツを身に纏ったまま、穏やかな表情で眠っている。もし自分が恋人だったらこんな寝にくい素材でできたスーツは脱がしてやるんだろうが、残念ながらそこまではしてやることはできない。
「お疲れ様、いつもありがとな」
俺は寝ている莉乃に小さな声でつぶやいた。
莫大なオーラを体内に有する俺や莉乃がオーラ切れを起こすことは珍しい。今の状況は、それだけ莉乃が頑張っている証に思えた。
高校とこの仕事を両立させることはかなり大変だ。他の隊員と比較しても莉乃の出撃回数は毎月かなり多い。莉乃の普段からの仕事ぶりを俺はとても高く評価していた。
(さて、そろそろ帰るか)
気持ちよさそうに寝息をかいている様子を見ていると俺も眠くなってきた。
俺は窓の方へ歩き出した。しかし、その瞬間、いきなり右手を引っ張られ、ベッドの上に仰向けに倒された。
「えっ!」
俺が上半身を慌てて起こした瞬間、黄緑色のオーラが俺の身体を多い、首より下が動かせなくなった。
これは莉乃が持つ能力『金縛り』だ。
莉乃の両目が黄緑色に輝いているため間違いない。体内に莫大な量のオーラを持つ特級戦力は、能力発動時に瞳の色が変わり光り輝くのだ。
「莉乃! オーラ切れは演技だったのか!」
ベッドの脇に立つ莉乃は悪い顔をしていた。
「演技じゃないよ! 少し寝たら元気になっただけ。ありがとう遥斗。愛してる!」
「嘘つけ! オーラ切れになったら8時間は眠り続けるんだ!」
「そうなんだ? それは知らなかった」
莉乃は口元に怪し気な笑みを浮かべている。全身の拘束はかなりきつく指一つ動かせない。体内のオーラを本気で放出すればなんとかなるだろうが、オーラの勢いでこの部屋ごと吹き飛ばしてしまう恐れがあった。
「ふざけてないで、早く拘束を解いてくれ!」
「だめだよ。そしたら帰っちゃうじゃん!」
「そりゃ帰るよ! もう夜中だぞ!」
「じゃあだめ、そこで見てて!」
「見るってなにを……」
俺が困惑していると、莉乃はなんと服を脱ぎ始めた。上下のスーツを手際よく脱いで行き、すぐに下着だけになった。
「り、莉乃? 何をやっているんだ?」
「なにって……。見てわかるだろ?」
自分から脱いでおいて莉乃はすごく恥ずかしそうにしている。顔がめちゃくちゃ赤い。胸の鼓動が速まるのを感じる。
莉乃はそのまま、布団の上に乗ってくると、俺のすぐ前まで四つん這いで近づいてきた。絶対にまずい状況なのだが、莉乃の顔が色っぽくて不謹慎にもドキドキしてしまう。
莉乃は俺の目の前まで来ると、上半身の下着も外し、大きな二つの胸が露わになった。
あまりの状況に俺が言葉を失っていると、莉乃が恥ずかしそうにしながら口を開いた。
「しよ?」
一瞬、訳がわからないくらいの欲望が込み上げてきて流されそうになるが、なんとか俺は正気を保った。
「だめだろー!! こんなことをしたら!! だいたい、男の前でそんな格好にならないでくれ!!」
俺は必死に説き伏せようとする。身体を見ないように首だけを壁に向けた。
「いいんだよ。好きな男の前なら!」
莉乃はやらしく微笑むと『金縛り』を解除した。そして胸の辺りを触り、俺を押し倒してきた。
「いいでしょ?」
莉乃は色気たっぷりの表情をこちらに向けてきた。その顔と、莉乃の身体があまりに魅力的すぎてどうにかなってしまいそうだ。
「だめだ! 降りて服を着てくれ!」
俺は瞳を閉じてそう口にした。頭の中に二人の恋人の顔が浮かんでいた。
「嘘だろ? やらないのか? こんな美女がここまでしてるんだぞ!? 普通の男なら全身から涎を垂らして喜ぶぞ!」
「普通の男じゃなくて悪かったな! ダメなもんはダメだ!!」
「私とお前との仲じゃないか!?」
「だからダメなんだろ!!」
「私のことが嫌いなのか?」
目を開けると、今にも泣き出しそうな顔をしている。これが演技なのは分かっているが、それでも少しドキッとしてしまった。ずるいやっだ。
「別に嫌いじゃないよ! いい奴だってのは十分知ってるし、仲間としてはめちゃくちゃ信頼してる!」
「ならいいじゃないか!? 私とお前の相性は最高なんだ!」
「能力の話だろ! やらしく言わないでくれ!」
「ごちゃごちゃうるせぇ! やろう!!」
話しても無駄だ。目がキマっちゃってる。顔は真っ赤だ。めちゃくちゃ可愛いが。それでも絶対にだめだ。俺には最高の彼女がいる。それも、二人も。浮気なんてもってのほかだ。
俺は念力を発動させると、莉乃をベッドの横まで運び立たせた。そして、布団を操作して顔から下を身体を覆い隠した。
莉乃はその瞬間、悲しそうな表情を浮かべた。
「任務、お疲れ様! またな!」
俺は、そう口にすると、窓を開けて出ていった。
♢ ♢ ♢
「はぁ……、これでもダメなのか……」
莉乃は布団に倒れ込んだ。
(なんて強い精神力と真面目さだ。まぁそんな男だから好きになったんだけど……流石にこれは想定外だ……)
布団からわずかに自分のものではない匂いがする。
「遥くんの匂いだ。これはこれでいっか……」
いつか必ず落とす。どんな手を使っても。正直言って、今誰と付き合っていようがそんなことはどうでもいい。いつか私が彼と結ばれることは決まりきっているから。今日はこの幸せな布団を堪能しよう。
「あー、好きだなぁ。ほんと……」
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ここまでお読みくださりありがとうございます。少しでも面白さを感じていただけたら星やハートで評価していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
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