第35話 力の限り
「よし、とりあえずここら辺は片付いた」
倒した魔物達の魔石を回収しながら、俺は風花に電話をかけた。
「もしもし?」
「風花、大丈夫!?」
「遥斗くん! 良かった! こっちは大丈夫だよ。八王子は出現数が少ないみたい。もうお母さんたちとシェルターに入ってるよ!!」
「了解。無事で良かった! 凛花も無事だから安心してくれ! 今体育館に避難しているよ」
「良かったぁー! 二人と連絡つかないから心配してたんだよ!! 」
「今日デスパレードが終わったら会いに行っても良いかな?」
「うちに来てくれるの!? もちろん大丈夫だよ! ありがとう!」
「とにかく警報が解除されるまで頑張ってくれ! また後で!」
良かった。風花たちも無事なようだ。これで心置きなく戦える。
デバイス上に都内の地図と魔物の出現数が表示されている。地図上に表示された赤い丸の大きさで魔物の数が把握でき、金色と銀色の丸がそれぞれSS級とS級モンスターだ。
長官からのメッセージによると、どうやら今回の死の群進は東京、埼玉、神奈川で同時多発的に発生しているようだ。
画面を見ていると莉乃から通信が入った。
「莉乃! そっちは大丈夫か?」
「こっちは大丈夫! 中心地の方がやばいみたいだよ! 私もこっちを片付けたらすぐに向かう!」
「了解」
俺は次に七番隊の隊長に電話をつないだ。
「隊長! 大丈夫ですか!?」
「遥斗! こっちは大丈夫だ! 上手くばらけて対応できてる!! 七番隊のことは考えず、厳しいところに向かってもらっていいぜ!! たぶん長官からたくさん依頼が入っているだろ?」
「わかりました!」
現時点で14件の依頼が入っている。俺は古いものから順に救援に向かっていった。
♢ ♢ ♢
午後4時12分。東京都立川市、昭和記念公園にて大量出現した魔物(SS級三体を含む)を殲滅。
午後4時14分。東京都東村山市、駅前商店街にてSS級魔物『雷電アリゲーター』撃破。
午後4時17分。埼玉県川口市、ショッピングモール駐車場にてS級魔物『異次元オーガ』五体撃破。
午後4時20分。東京都北区赤羽、八幡神社境内にて大量出現した魔物( S級八体を含む)を殲滅。
午後4時23分。東京都大田区、羽田空港滑走路にて大量出現した魔物(SS級四体を含む)を殲滅。
午後4時25分。神奈川県横浜市、赤レンガパークにてS級魔物『オーロラベア』五体を殲滅。
午後4時29分。東京都世田谷区、世田谷城址にて大量出現した魔物(SS級一体を含む)を殲滅。
午後4時33分。神奈川県藤沢市、片瀬海岸城址にて大量出現した魔物(S級九体を含む)を殲滅。
午後4時35分。神奈川県海老名市、海老名市役所駐車場にてS級魔物『分裂リザード』を撃破。
午後4時39分。東京都目黒区、中目黒公園にて大量出現した魔物(SS級二体を含む)を殲滅。
午後4時42分。東京都西東京市、多摩六都科学館にて大量出現した魔物(SS級一体を含む)を殲滅。
午後4時45分。東京都足立区、東京武道館脇にて大量出現した魔物(SS級二体を含む)を殲滅。
午後4時47分。東京都江戸川区、葛西駅南口ロータリーにてSS級魔物『爆散ガマ』を撃破。
午後4時48分。東京都江戸川区、弁天池にてSS魔物『石化タートル』を撃破。
弁天池上空にて石化タートルの魔石を回収した俺はゴーグルに表示される情報を確認した。すると、新たに37件の救援依頼が入っていた。
「キリがないな。でもやるしかない」
緊急警報が鳴って30分以上経つが、未だに魔物の出現は収まらなかった。東京、埼玉、神奈川の至る所で妖魔殲滅部隊やソルジャー、ガーディアンの人達が魔物との戦いを繰り広げていた。
俺は休むことなく、すぐに次の任務に向かった。
♢ ♢ ♢
午後7時50分、俺は雲一つない夜空を新宿に向かって飛行している。数えきれないほどの任務をこなした結果、ほとんどの街で緊急警報は解除されていた。
高校がある第七区と、東京の西半分の地域は割と早い時間に解除になったため、今頃凛花は自宅に戻っているはずだ。
(ああ、早く二人の元へ行って話がしたい)
数時間前の、俺の正体を知った凛花の顔が頭に浮かぶ。今頃二人は怒っているかもしれない。もし今回のことがきっかけで、嫌われてしまったらと思うと胸の辺りが冷んやりしてくる。一刻も早く二人の元へ急ぎたいが、まだそれは出来なかった。
新宿に召喚されたのは『風神竜』と名付けられた魔物だ。風神竜は召喚される魔物の中でも最強とされている『八神』に数えられている魔物で、その強さは他の魔物と比べ物にならないとされている。
最後に出現したのは俺が生まれる前だが、その時は多くの犠牲者が出たようだ。住民の避難がすでに完了しているとはいえ、奴がもし新宿で暴れたら被害は甚大なものになるだろう。
「急がなきゃ」
俺は大気を切り裂くように空を駆けていく。すると都庁が見えてきた。さらに近づいていくと、地上から200mほどの空中に深緑色をした巨大なドラゴンが視認できた。頭から足の先まで30メートルは超えているように見える。かなりでかい。
風神竜は空中にとどまり、辺りを見回していた。
「遥斗! 早かったな!!」
「お疲れ様です! 桐生さん」
広場の前まで来ると桐生さんが声をかけてきた。桐生さんは本名を桐生大和といい、俺と同じ特級戦力の一人だ。普段は新宿区や中央区などで構成される第一区を守っている。
桐生さんは51歳の男性で、30年以上東京の中心部を守ってきたレジェンドだ。当然、半端なく強いが、その戦い方は徒手空拳によるもののため空中戦は苦手としている。そのため、俺がヘルプに呼ばれたのだ。
ちなみに桐生さんは、2年前に俺が特級戦力に認定されたときに、俺のインストラクター担当だった。強敵との戦い方や心構えなど、色々教えてもらったため、師匠のような存在だった。
ヘルメットをつけているため表情は分からないが声から疲れている様子が感じとれた。
「悪いな遥斗! あいつがおそらく今回で一番の強敵だ! 一人で行けそうか?」
「たぶん大丈夫です! 任せてください」
「頼もしいな! じゃあ俺は渋谷方面に行ってくるからよ! 頼んだぜ!!」
「わかりました」
俺はすぐにドラゴンの正面に移動した。
深緑色の体はツヤのやる鱗で覆われている。頭からは一本の鋭い角が生えており、エメラルド色に輝いていた。全身からはドス黒いオーラが漏れ出していて、他の魔物には見られない圧倒な存在感を放っていた。
鋭い眼光が俺を睨みつけてくる。敵と認識したのか奴は大気が震えるような雄叫びを上げ始めた。
「召喚されたばかりのところ悪いが、死んでくれ。ここはお前のいるべき世界じゃない」
俺はオーラで奴を包み込み、念力で全身を拘束しようとした。
「くっ、だめか」
しかし、奴の力が強大すぎてすぐに拘束を破られてしまった。風神竜はお返しとばかりに口からオーラの塊を放出してきた。馬鹿でかいオーラの塊を俺は避けずに念力を使って上空に飛ばした。
(全身の拘束ができないなら、これならどうだ)
俺は奴の首だけにオーラを集中させ、首の骨を折ろうとした。しかし、ドラゴンの防御力は尋常ではなく、折るどころかヒビすら入れられなかった。
(なんで硬さだ。こいつはもうSS級じゃないだろ! もう一つ上の位を作らなきゃだめだ!)
他のSS級とは一線を画す実力に戸惑ってしまう。俺の攻撃を防いだ奴は巨大を回転させながら尻尾で上から攻撃してきた。
あまりに速い攻撃に避けることができず、攻撃は直撃した。俺は吹っ飛ばされ、都庁前広場の地面に墜落した。ものすごい衝撃を背中に感じた。地面にぶつかる瞬間、身体を念力で操り、衝撃を吸収したのだが、それでも俺の体は深くコンクリートの地面を抉っていた。
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